著者
池田 大助 福田 護 高島 博 布施 春樹 平野 章治 増田 信二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.29-32, 2003-01-20
被引用文献数
1

病理組織所見が腎結核に極めて似ているが,実際は結核感染症ではない「偽結核性腎盂腎炎」症例を報告する.症例は56歳女性で,主訴は左側腹部痛であった.左さんご状結石に腎膿瘍が形成され,それが後腹膜腔に進展したものと診断された.術前の尿培養では,抗酸菌を含むいかなる細菌も検出されなかった.左腎摘除術が施行された.摘出腎には,乾酪性壊死や類上皮細胞からなる結核結節が認められ,腎結核を示唆する所見であったが,腎病巣および術野で得られた膿を検体とした諸検査では,抗酸菌の存在を証明できなかった.以上の所見より,本症例は偽結核性腎盂腎炎に腎膿瘍が合併したものと診断された.近年本疾患についての報告が散見されるが,十分に認知されているとは言い難い.不必要な抗結核療法を回避するためにも,本疾患についての十分な認識が必要である.
著者
前田 雄司 小松 和人 岩佐 陽一 金谷 二郎 高 栄哲 並木 幹夫 三輪 聰太郎 布施 春樹 平野 章治 近藤 宣幸 古賀 実 竹山 政美 松宮 清美
出版者
日本泌尿器科学会 = Japanese Urological Association
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 = Japanese Journal of Urology (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.91, no.10-11, pp.673-678, 2000-01-01

(目的) 精巣微小石灰化 (testicular microlithiasis; TM) は, 精細管内に特徴的な石灰化を認める比較的稀な病態である. 日本人におけるTMの出現頻度や, その臨床的重要性についての報告はほとんどない. 今回, 精巣生検組織および精巣摘出標本をTMについて再評価し, 精巣病理組織標本が得られた集団中での出現頻度について検討した. (対象と方法) 1988年1月から2000年5月までに得られた200症例の精巣病理組織標本 (精巣摘出標本56例, 精巣生検144例) を検討した. (結果) 200例の病理組織中, 7例 (3F5%) にTMを認めた. TMの7例中, 4例は胚細胞腫瘍の症例で, 残りの3例は男性不妊症精査の症例であった. 胚細胞腫瘍41例中, TMは4例 (9.8%) であった. 不妊症精査の122例中3例 (25%) にTMを認めた. 胚細胞腫瘍症例の組織標本には, 胚細胞腫瘍以外の症例の組織標本よりも有意にTMが多かった (p<0.05). (結論) TMは比較的稀な病態であるが, 精巣腫瘍により高率に認められる. TMと精巣腫瘍との関連をさらに検討するためには, 偶発的に発見されたTMに対する経過観察を行い, 症例を蓄積していくことが必要と考えられた. (purpose) Testicular microlithiasis (TM) is a relatively rare condition characterized by calcific concretion within the seminiferous tubules. Little has been reported on the incidence or the clinical implication of TM among Japanese. To address the problem, we evaluated pathologic specimens from biopsies and orchiectomies, of testes with various conditions. (Materials and Methods) Pathologic specimens of the testes of 200 cases, 56 from orchiectomy and 144 from testicular biopsy, were investigated. (Results) The pathological diagnosis of TM was confirmed in seven (3.5%) cases, four of which were associated with germ cell tumors and the other three were obtained from testicular biopsies performed for examination of infertile men. Of the 41 patients with germ cell tumors, four (9.8%) were found to have TM, and another three (2.5%) were identified among 122 patients with infertility. The prevalence of TM is significantly higher in specimen with germ cell tumors than those without germ cell tumors (p<0.05). (Conclusions) Although TM is rarely encountered, this condition is relatively often accompanied by testicular malignancy. Further investigation would be fundamental to ascertain the relationship between TM and testicular malignancy.