著者
平野勇二郎 勇二郎 一ノ瀬 俊明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100205, 2017 (Released:2017-10-26)

今後の人口減少と高齢化に備えて、居住域の交通計画について検討が必要である。スプロール化が進行した現在の空間構造のまま人口減少した場合、広域的に人口密度が低下し、とくに地方部では過疎化が深刻化する。この結果、生活の利便性の低下や、環境負荷の増大が懸念される。とくに交通に関する問題は重大である。利便性を維持するためには公共交通の充実が不可欠であるが、過疎化した空間構造の中ではインフラの維持管理コストが見合わない。このため、人口密度が一定以下になれば自動車が不可欠となるが、運転困難な高齢者の生活がますます困難となる上、一人当たりCO2排出量の増加などの環境負荷にも結び付く。このため、今後の人口減少に備えて居住域をコンパクト化する提案も多い。こうした背景から、今後の居住域の空間計画を検討する上で、都市条件と交通手段の関係について把握することが不可欠である。そこで本研究では、家計調査などの統計データから交通手段ごとに移動距離を算出し、都市間での比較を行った。この結果から、全体として自動車の移動が多く、大半の都市において半分以上は自動車が占めていることが示された。大都市では鉄道の割合が相対的に高いが、地方部では大半の移動を自動車が占めている。また鉄道、バス、タクシーの合計を公共交通とし、自動車との関係を調べたところ、若干の負の相関が生じた(R=-0.650、1%有意)。この結果から、自動車と公共交通の間に代替性が定量化された。また、自動車と公共交通を合わせた移動距離は公共交通の利用が多い地域の方が若干短く、都市域において高密度化した都市構造に伴い、移動が効率化されている可能性が高い。今後、各都市の人口密度や土地利用などの詳細な都市構造を踏まえて、さらに解析を進める予定である。