著者
一ノ瀬 俊明 下堂薗 和宏 鵜野 伊津志 花木 啓祐
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.785-797, 1997-11-30
被引用文献数
14

エネルギー消費を通じて人間活動がどの程度ヒートアイランドに寄与しているのかを定量化し, 都市の熱環境を緩和する手段としてのエネルギー消費量削減の有効性を検討するため, 東京23区をフィールドとして局地気象モデルによる数値シミュレーションを行った. 細密地理情報にもとづいて地表面境界条件の高精度化をはかることにより, 人工排熱の時空間分布構造が都市の熱環境に与える影響の評価が可能となった. 冬季は海風が弱いため明瞭なヒートアイランドが終日現れ, 周辺との気温差は最大で約2.6℃に達した. また20時頃には人工排熱量の多い大手町, 新宿, 池袋に高温の極が認められた. 都心部における人工排熱の影響は夏季に最大1.5℃, 冬季に最大2.5℃と見積もられたが, 給湯用エネルギーの50%及び冷房用エネルギーの100%を削減した場合の効果は最大で-0.5℃に過ぎなかった
著者
一ノ瀬 俊明
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100073, 2012 (Released:2013-03-08)

2011年8月の晴天日に茨城県つくば市の(独)国立環境研究所敷地において、日中屋外(建物等による日影のかからない場所)で色彩以外が同一規格の衣料(U社製、同一素材・デザインのポロシャツ、色違いの9色)を用い、表面温度の経時変化を観測(赤外線サーモグラフィで最高温度を読み取る)した。色には明度という概念があり、標準的な原色(教育用折り紙)で比較した場合、白(明度1.0)、黄(1.0)、赤(0.8)、紫(0.7)、青(0.7)、緑(0.6)、黒(0.0)という数値が得られるが、この明度が可視光の反射率を代表していると考えられる。ポロシャツを使った実試験に先立ち、教育用折り紙で同様の試験(2011年7月6日午後:快晴)を行ったところ、ほぼこの順番(14時に白44℃、黄49℃、赤54℃、紫57℃、青59℃、緑62℃、黒71℃)で低温から高温に並ぶ結果が得られたため、折り紙の場合は可視光の反射率が表面温度を決める支配的要因の一つであると考えられる。 U社製品の結果でも色彩による温度差は明瞭であった。白、黄がとりわけ低く、灰、赤がほぼ同じレベルで、紫、青がさらに高めで拮抗し、緑、濃緑、黒が最も高温のグループを形成した。また、一般に日射が強まるとこの差は顕著となった。このように、明色側の結果はほぼ折り紙の場合と同じであったが、暗色側で若干順序が入れ替わっており、とりわけ濃緑や緑が黒よりも高温となるケースも多く観測された。黒など一部の色については、表面にUVカットのための特殊加工が強く施されている可能性もあり、明度の序列どおりの温度の序列にならなかったものと考えられる。 2011年3月の震災・原発事故後、夏季の空調における節電の必要性が強調されている。演者は衣服の色彩にも注目すべきであると考え、今回の実験を行った。この分野は家政学・被服学の領域であるが、従来ほとんど関心が向けられていなかったようで、データも少ない。屋外を徒歩で通勤する場合、夏服の色彩は、熱中症の予防など、健康維持の視点からも重要であるが、職場などに到着した際の空調に対する要求に関して有意な差をもたらしうるかどうかの検討が必要であると思われる。
著者
一ノ瀬 俊明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.229-235, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
16

地理学の成果を政策立案に生かすための行政支援の事例として,世界的に高い評価を得たヒートアイランド対策の体系化,および国連環境計画の地球版環境白書など,従前より筆者が関わってきた地理学のアウトリーチ活動を振り返り,アウトリーチ活動への提言をまとめた.研究活動が少なからぬ公的資金で支えられている今日,アウトリーチ活動は単なる社会奉仕にとどまらない.研究活動を見直し,強めていくプロセスでもある.とりわけ,アウトリーチ活動を通じて得られた各種ステイクホルダーからのリアクションを,自身の研究活動にフィードバックしていくことが重要である.
著者
一ノ瀬 俊明 陳 宏
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.216, 2011

世界最速の都市化、自然条件の多様性というバックグラウンドを持つアジア地域の都市を対象に、環境配慮型都市デザインを実現するための研究を推進してきた。都市の物理的な形態、取り巻く自然条件の優位性、特有の政治・社会体制を最大限生かしたデザインを、日本国内では困難な社会実験(顕)などを通じて得られた知見(実証結果)をもとに提示し、グローバルな都市デザインへの貢献、都市計画のパラダイムシフト、低炭素都市実現への革新的ロードマップの提示をめざすものである。今日、経済的利潤の最大化よりも、よりよい環境の創造を優先させた都市計画の事例は存在せず(先進各国では実質的に不可能)、実現するとしたら、土地利用、都市計画における政策的トップダウンが有効であるアジア(中国など)をおいてほかにないとの考えのもと、数値シミュレーションではなく、実地で効果が検証できれば、都市計画の汎世界的なパラダイムシフトへ近づけるものと考えられる。これは、都市の普遍的な技術システム研究とは異なり、また、上記の視点は日本特有のものである。<BR> 手法としては、フィールド観測と数値シミュレーション、ワークショップが中心となる。その過程で、都市計画・建築計画に環境研究の結果を活かすために、その重要な要点を地図上に表現したもの(環境アトラス)を作成し、これをベースとした解析・議論を進める。たとえば、都市の自然を活かした暑さ対策は、その地域(都市)特有の自然条件、気候条件(海風や山風、緑地や河川)を活用するという意味では、特殊素材などの導入に比べ、空間スケールの大きな対策となりうるが、どこでも同じようにできるというものではない。またこの過程では、市民・行政官・専門家(研究者・デザイナー)がラウンドテーブルで、観測・シミュレーション結果、学術資料をもとに、都市環境に配慮した都市開発プランを討議し、合意形成を進めていくことが必要となる。このアプローチの有効性を確認し、普及させていくことにこの研究の意義がある。<BR> わが国と体制・制度・自然条件の異なる中国の都市において、制度的有利性に依拠した形での、新たな都市開発の方向性を模索し、都市の熱環境の悪化防止、あるいは改善を実現するような都市計画が具体の都市において実現することをめざし、武漢を対象として、数値計算や野外観測の結果にもとづき、来る3月にまちづくりワークショップを開催する。ここでは、「ヒートアイランド緩和策」を盛り込んだ市街地の整備プランなどの提案を行う。当日はその結果について報告する。<BR><BR>謝辞:本発表は、科研費基盤研究B「中国におけるクリマアトラスを通じた都市熱環境配慮型都市開発の実現」(代表・一ノ瀬俊明)の研究成果の一部である。
著者
泉 岳樹 岡部 篤行 貞広 幸雄 花木 啓祐 一ノ瀬 俊明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究 (ISSN:09150390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.171-178, 1999-10-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1

This paper predicts the effects of the capital relocation on a thermal environment using a meso-scale meteorological model. Five candidate cities, Tomakomai, Nasu, Hamamatsu, Toki and Ueno, are chosen for study areas.The simulation results show that temperature will rise in all the candidate cities after the relocation. The temperature rise averaged over a day is from 0.5 to 1.0 degree centigrade in each candidate city. In the coastal candidate cities, Tomakomai and Hamamatsu, the temperature will rise not only in new capital regions but also in the leeward regions because of the sea breeze.Relative contribution of land cover changes and anthropogenic heat to the temperature rise are also compared. The temperature rise in the daytime is brought mostly by land cover changes. At night the influence of anthropogenic heat becomes large, and in some candidate cities it becomes greater than that of land cover changes. These results imply the energy-saving at night is effective for controllingthe temperature rise in a new capital.
著者
劉 農 王 勤学 一ノ瀬 俊明 大坪 国順
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.586-600, 2005-08-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
33
被引用文献数
5 2

人ロセンサスなどの統計資料を用い,中国国内における1990年と2000年の流動人口(戸籍を移さない転居人口)の空間分布,およびその変化を県レベルの精度で調べた.その結果,以下の事実が明らかとなった.流動人口の空間分布は主に都市部に集中し,北京市,天津市,珠江デルタ,長江デルタ,各省の省都が巨大な流動人口の受皿となっている.1990~2000年の10年間に流動人ロの規模と範囲は急激に増加し,1990年には到着地が大都市に集中した点状分布となっていたのが,2000年には大都市を中心とした経済発展の著しい地域に面状に分布するように変化し,沿海,長江沿い,交通要路沿い(たとえば,北京-広州問京広鉄道沿線),国境沿いの四つの増加帯を形成した.省間移動は1990~2000年の10年間に急増し,省内移動を上回るようになった.また,流入の多い約100都市について,経済格差,投資,都市化,雇用,産業構成,交通の便利さを代表する10変数を独立変数として流動人口に対して重回帰分析を行い,移動要因を解析するとともに流入大都市における流動人口を推測する重回帰式を提案した.その結果,2000年においては,都市GDP,1万人当たり旅客運送量,1人当たりGDP,海外からの投資額の4変数で流入現象の83.7%を説明できた。都市GDPが流動人口と最大の偏相関を持ち,移動先の経済力が人々を引き付ける最も重要な要因ということが裏付けられた.さらに,全国県(都市を含む2327箇所)に対して県内GDPと流動人口の回帰分析を行い,中国全県に対する流動人口を推測する式を提案した.
著者
一ノ瀬 俊明 大西 暁生 石 峰
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.167-179, 2013-03-29 (Released:2014-04-15)
参考文献数
25

中国の黄河流域において,大西ら(2006)の推計した水資源需給構造と,Ichinose et al.(2009)の推計した地下水利用構造とを地域別に直接比較することにより,データが存在せず実態把握の困難であった当該流域における地表水の利用構造を描き出すことを試みた。黄河流域に大部分が含まれる35 の地級行政単位を抽出し,立地の近接性と水資源需給構造の形態的類似性(共通する特徴)に着目してそれらを12 の小流域に分類した。一般に上流域では地表水に依存し,農業での利用割合が低いため,地下水利用の季節変動性は小さい。一方,中流域から下流域では地下水への依存の度合いが高くなり,農業での利用割合が高くなるため,地下水利用の季節変動性は大きくなる。とりわけ,その傾向は黄土高原において顕著である。また,最下流域では再び地表水に依存している。さらに地下水利用構造の類似性にもかかわらず,小流域の中でも地表水を含めた水資源の需給構造に多様性が見られる地域がある。とりわけ中流域では,大河川へのアクセスの状況に応じて多様性が顕著である。
著者
一ノ瀬 俊明 LIKHVAR Victoria ビクトリア リグバル
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

AndroidにCO2濃度等のセンサーを組み込み、リアルタイムに計測データを位置情報、時刻情報とともにサーバーに集約する、ポータブル型環境モニタリングシステムを開発し、ラグランジュ的環境モニタリングの実施をつくばと東京で行った結果、大気汚染現象の局地性がきわめて高いことが具体的な時空間情報として示された。また、送信された被験者の暴露情報と健康情報を組み合わせることにより、リアルタイムのリスク診断が可能となった。
著者
一ノ瀬 俊明 白 迎玖 泉 岳樹 三上 岳彦
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

2006年まで4年間の8月中旬に、復元河道近傍および河道より100m以内の5地点で、集中的な移動・定点観測による体感温熱指標SET^*の観測(温・湿度、風速、天空放射、地物表面温度)を行った。また、サーモカメラによる地物表面温度の観測、シンチロメーターによる上向き顕熱フラックスの観測、ソウル市政府が観測している大気汚染物質濃度の時系列解析などを行ってきた。CFDモデルによる数値シミュレーションからは、復元河道上を吹走する冷気が渦を巻きながら、河道に直交する街路へ南北同時に侵入する様子が計算された。2006年夏季に超音波風向・風速計などによる集中気象観測を行った結果では、河道上および河道南側80m付近で清渓川に沿った西風(海風)の強・弱に対応して、気温の下降・上昇が見られ、河川から周辺地域への冷却効果のプロセスが実証された。そこで2007年夏季の集中気象観測では、冷気の川面から周辺市街地へ輸送されるプロセスに関して、その発生源である河道内の気象学的なメカニズムを検証することを目的として、河川真中と南北川岸において、ポールを立て、鉛直(高さ別)に気温や湿度の測定を行った。清渓川の河川水による冷却効果については、川面に近い高度ほど気温が低く、水蒸気密度(絶対湿度)が大きい傾向が見られた。また、南側の鉛直分布に関しては、北側より相対的に気温が低い傾向が見られた。また地表面に近いほど気温が低くなっている傾向が見られた。一方、北側では日中地表面に近いほど気温が高くなっているのがしばしば観測されている。それらの要因としては南側沿道の地表面には植物が繁茂しているのに対し、北側の地表面はコンクリート面がむき出しになっていることが考えられる。以上の結果から南側河岸の方に冷気層が形成されている可能性が示唆された。
著者
一ノ瀬 俊明 花木 啓祐 泉 岳樹 陳 宏
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

華中科技大学と共同で、中国・湖北省・武漢市の長江両岸地区(武昌と漢口)において再開発が想定される地域を対象に、夏季と冬季の集中気象観測、ならびに街区スケールの気流等に関する数値計算を行った。観測からは、河道上の風速が強まるのと連動し、直交する街路上の風速が強まり、同期して気温の変動が生じていることが示された。また、気象観測や数値計算の結果にもとづき、ヒートアイランド緩和策を盛り込んだ市街地の整備プランを提案した。