著者
田中 恵理子 代 英杰 林 永波 古月 文志 田中 俊逸 神 和夫 平間 祐志
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.807-813, 2009-09-05
参考文献数
18
被引用文献数
1 5

2005年11月中国吉林市にある吉林石油化学会社の工場で起こった爆発事故によって,ニトロベンゼンが中国東北部を流れる松花江に流入し,河川を汚染した.本研究では,汚染物質が通過したハルビン市内の松花江で採取された魚試料中のニトロベンゼンの測定を行った.また,ニトロベンゼンの代謝によって生成すると予想されるニトロフェノール類の定量を行った.ニトロベンゼンの抽出と濃縮には,精油定量装置を用い,魚試料の調製,魚試料の前処理,抽出条件等について検討した.その結果,2006年3月と10月に採取した魚試料からは比較的高い濃度のニトロベンゼンが検出された.また,魚試料からニトロベンゼンの代謝物と思われる<i>o</i>-,<i>m</i>-,<i>p</i>-ニトロフェノールが検出された.
著者
平間 祐志
出版者
北海道立衛生研究所
雑誌
北海道立衛生研究所報 (ISSN:04410793)
巻号頁・発行日
no.52, pp.73-77, 2002

有機塩素系農薬やPCBsなどの化学物質は広く環境中に分布し、食物連鎖によってより高次の生物に蓄積することが知られている。これらの化合物の中にはエストロゲン作用や催奇形性、免疫能の低下をひきおこす原因となる物質も含まれており、野生動物やヒトへの影響が懸念されている。これらの化合物の生体中での蓄積や代謝についての特徴を把握することは、化学物質の暴露による影響を予測する上できわめて重要なことと考えられる。PCBsは理論的に209種類の異性体・同族体が存在する。PCBsは多成分からなる混合物として製造されたため、その製品中には約140種類の異性体・同族体を見いだすことができる。日本では鐘淵化学のカネクロールKC-300、KC-400、KC-500、KC-600が主なPCBs製品であり、これらの製品の組成はドイツやアメリカで製造されたクロフェンやアロクロールなどのPCBs製品とほぼ同等であることが知られている。環境を汚染しているPCBsはこれらのPCBs製品であるが、高次の生物に残留しているPCBs組成はその起源となるPCBs製品とは異なったものとなっている。これは食物連鎖の末端から順次高等な生物に取り込まれていく過程で、体内で誘導される薬物代謝酵素チトクロームP-450群によって代謝されていくためである。北極圏に生息するタラ、アザラシ、シロクマは垂直的な食物連鎖の典型であり、それぞれの体内に残留するPCBsは複雑な組成から単純な組成に変化している。暴露源のPCBs組成と生物に残留するPCBs組成の両方を測定することによって、それぞれの生物に固有の薬物代謝能を知ることができる。また、生物体内に残留しているPCBs組成を調べることにより、汚染源のPCBs組成を推定することも可能であると考えられる。本報では組成が既知のPCBsとしてのKC-300、KC-400、KC-500、KC-600を含むコーンオイルを調製し、これをマウスに一回、経口投与し、肝臓に残留するPCBs異性体・同族体の濃度と組成を解析することによって、PCBsの化学構造と代謝の関係を明らかにすることを目的とした。