著者
広岡 守穂
出版者
法学新報編集委員会
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.122, no.3, pp.1-25, 2015-08

一九六〇年代後半から一九七〇年代前半にかけての一〇年は大きな文化変容の時代だった。この時代は対抗文化としての若者文化の台頭や性革命がおこった。人びとは権威に従順ではなくなったし、意識調査にもそれ以前とはちがう傾向が現れた。女性がみずからの性を語りはじめた。他方思想界では、疎外論や管理社会論がさかんだった。 一九七二年、武田京子が「主婦こそ解放された人間像」で、資本主義の労働現場から距離を置く主婦こそ社会変革の重要な担い手なのだと論じて、いわゆる第三次主婦論争の口火をきった。しかし振り返ってみると、生活クラブ生協グループや子ども劇場など非営利の事業活動の意義は、あまり注目されていなかった。 おなじ七二年に田中美津の『いのちの女たちへ』が刊行された。これは女性のセクシュアリティをふまえてジェンダーの問題に切り込んだ画期的な著作だった。日本の第二次フェミニズム運動は、同時代の大きな文化変容の波を受けて、そこに社会変革の思想をつくりあげた。ジェンダー平等の思想はこのようにして登場したのである。