著者
比留間 トシ 広島 秀子 松元 文子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.159-163, 1971-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1. 衣に使用する水の温度が30℃では、たん白の水和力が強く、衣が油に投入される前に粘度が高くなり種に多く付着し、水分と油の交代が悪くなるため、からりと揚がらない。逆に水温が低すぎても交代は悪く成績がよくない。それは衣の浮き上がりがおそいことから察せられるように、衣が油に投入されてから脱水し始める前に小麦粉との水和が進むためであろうと考えられる。2. 衣に使用する小麦粉はたん白含量が少ない方が揚げ衣の成績がよい.特に低たん白粉の場合は衣の水分と油の交代に水温の影響が少ない。3. 卵は衣の膨脹を助け軽い口ざわりの衣とする。卵水を用いた生衣の粘度が他に比べて高いのは、卵水自体の粘度が水に比べて高いためで、それにもかかわらず加熱中の水と油の交代が水だけの場合と各温度ごとに比べると、概ねよいのは、衣の膨脹によるためと考えられる。4. 各種衣の粉材料の離水量から、揚げ操作中の水分脂質の交代の程度を推察することができる。5.天ぷらの生衣の実用時間内の粘度を測定することは、ほとんど不可能に思われる.それはこの短時間内に天ぷら業者の特技ともいうべきわざをも含むからである。衣は少量ずつ作るという理由もここにある。