- 著者
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三宅 康之
広川 満良
- 出版者
- 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
- 雑誌
- 日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.2, pp.127-131, 1998-03-22 (Released:2011-11-08)
- 参考文献数
- 18
甲状腺の穿刺吸引細胞診と触診および超音波検査とを比較し, 細胞診の価値と限界について検討した.細胞診と超音波検査の感度はそれぞれ76.9%, 78.8%とほぼ同程度で, 触診は36.5%と低値であった.特異性は細胞診78.0%, 超音波検査78.0%, 触診81.0%で差はみられなかった.検体が十分に採取された症例での細胞診の感度は80.0%, 特異1生は89.7%で, 超音波検査や触診より良好であった.触診, 超音波では石灰化を認める方が正診率が高く, 細胞診では逆に石灰化がない方が高かった.触診では, 嚢胞を認める症例の方が正診率がやや高かったが, 超音波, 細胞診においては, 嚢胞がみられない症例の方が正診率が高かった.細胞診における採取不良や偽陰性の原因として, 石灰化, 被包化, 嚢胞化, 小病変などがあげられた.細胞診における組織型の推定率は未分化癌100%, 髄様癌90.9%, 扁平上皮癌75.0%, 乳頭癌59.8%であった.病変部から的確に十分な細胞量が採取されれば, 穿刺吸引細胞診は, 組織型まで推定できる非常に優れた検査法といえる.