著者
広瀬 寛子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.45-57, 1992-09-30 (Released:2012-10-29)
参考文献数
32

本論文の目的は看護研究における現象学的アプローチの適用と課題について考察することである. そのために, まず, 現象学的方法の特性を論じ, 次に, 筆者が看護研究において, 現象学的アプローチを選択するまでのプロセス及び現象学的分析方法を完成させるまでの作成過程について論じた.現象学的方法とは, 因果関係を明らかにしようとするものではなく, むしろ生きられた体験としての現象の本質を明らかにしていくことを探究する記述的研究方法である. 筆者は, これまで看護学生の体験世界と, 患者と看護婦との体験世界に焦点を当てた研究を行ってきた. それらの研究に共通に流れているテーマは, 人間の行動・経験にはすべて, その人個々の意味があり, その意味を重視したいということであり, そのテーマを明らかにするためには現象学的方法が一番適していると考えた. そのような経緯から, Giorgi, A.の現象学的分析方法を参考として, 事例分析方法と看護面接過程の分析方法を作成した. 看護面接過程の分析過程は以下のようにまとめられた; (1) 本質的な意味の単位である場面に分ける; (2) 各場面のテーマを記述する; (3) テーマの中心的意味を記述する; (4) テーマの中心的意味を総合し, 統合して, 状況的構造的記述と一般的構造的記述を導き出す.
著者
福井 里美 広瀬 寛子 米村 法子 坂元 敦子 新井 敏子 三浦 里織
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.37_60_fukui, 2023-04-05 (Released:2023-04-05)
参考文献数
25

目的:本研究の目的はがん終末期ケアに携わる看護師が経験するやりがい感の実態調査の過程で作成された尺度の信頼性と妥当性を検討することである.方法:先行研究および第1調査の実態調査データから5因子37項目の「がん終末期看護のやりがい感尺度(SMEEN)」を作成し,170施設のがん診療連携拠点病院の看護師1,304名の自記式質問紙調査のデータを用いて検討した.結果:因子分析により【ともに居るケアの意味と役割の実感】【さまざまな人生観に触れる学びと感動】【患者家族と医療チームの一体感】【苦痛軽減へ貢献した実感】【その人をより理解するケアの追求】の5因子構造が同定された.尺度全体のCronbach’s αは0.95であり,各下位領域も 0.80~0.92と十分な内的一貫性が示された.Multitrait Scaling分析の結果,構成概念妥当性が認められ,また終末期看護に携わる看護師の満足度尺度およびPOMS短縮版の活気との正相関が認められた.さらに既知集団では,緩和ケア病棟経験者および緩和ケアチームの経験者の得点が有意に高かった.考察:SMEEN37項目版が十分な信頼性と妥当性を有することが確認された.本尺度の活用により,終末期看護経験における肯定的側面に着目した実態把握や教育支援の評価が可能と考えられた.