著者
広瀬 智久
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.31-35, 1971
被引用文献数
1

1) 貯蔵トマトの追熟中のペクチン質並びにペクチン酵素の変化を追究する目的で, 樹熟果の成熟中の変化を調べ, これと比較検討した。2) 水溶性ペクチンは, 未熟果からDark Pink stage頃まで, ほとんど増減がなく, それ以後次第に減少した。追熟果では樹熟果に比較して, Breaker stageからTable Ripe stageにかけて, かなり低い値であった。3) Calgon 可溶性ペクチンは, 未熟果では少く, 成熟につれて増加した。全期間を通じて追熟果の含量がやや大であった。4) 塩酸可溶性ペクチンは, 成熟に従って減少した。追熟果の減少速度は樹熟果に比べてかなり緩慢であった。5) Calgon抽出, 塩酸抽出を行った後のしゅう酸アンモニゥーム可溶性ペクチンは, 成熟とともに減少した。追熟果は樹熟果との間に全く差異が認められなかった。6) 全ペクチンは成熟とともに減少したが, 追熟果の減少の方が緩慢であった。7) ペクチンエステラーゼ活性は, 成熟の初期に急増し, Breaker stage以後変化がなかったが, 追熟果は全期間を通じてやや小さい値をとった。8) ポリガラクツロナーゼ活性はBreaker stageまで, わづかづつであったが, それ以後成熟未期まで著しく増加した。追熟果もほぼ同様であったがDark Pink stage頃やや低かった。
著者
広瀬 智久 松尾 浩気
出版者
神戸大学
雑誌
兵庫農科大学・神戸大学農学部研究報告 (ISSN:0367603X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.95-99, 1968

1. 水田裏作として栽培されたオランダイチゴ, ダナー種の完熟果実を室温中に貯蔵し, その含有成分の変化の過程を調査した。収穫当日に含まれていた80%エタノール可溶性N化合物, 糖類の含有量は次第に減少したが, 有機酸の量は殆んど変化がなかった。しかし, 収穫後の水分含有率の低下は収穫後の日数と共に著しく。従って各成分の濃度(含有率)は相対的に高くなり, その結果N化合物の含有率の低下は比較的緩慢となり, 糖類の含有率は殆んど変化なく, 有機酸は上昇した。糖の種類は, グルコース, フラクトース, キシロース及び蔗糖であるが, 収穫後次第にグルコース及び蔗糖が減少し, キシロースがやゝ増加した。有機酸は大部分がクエン酸で, リンゴ酸, コハク酸及び痕跡の酒石酸が認められたが, 減少したのはリンゴ酸のみであった。2. 排水良き砂壌土の圃場に於て, 栽培された4品種のオランダイチゴ(紅露・幸玉, アメリカ・ダナー)の果実について収穫後に於ける諸成分の含有率の変化を比較した。N化合物・糖類・有機酸についてみると, その含有率自体は品種の特性を示し, 夫々非常に異なっているが, 含有率の貯蔵中の変化は互に平行的に推移し同様の傾向を示した。この実験の果実成分のペーパークロマトグラフィーの結果は, 水田裏作のダナー種に比べて, 糖類の内, フラクトースが特に多く, 蔗糖が少かった。品種間差異は特にグルコースに認められた。有機酸では, 酒石酸がかなり多く, 紅露及び幸玉ではα-ケトグルタル酸を認めた。品種間の差異は, 大部分をクエン酸に, 次いで酒石酸によって影響された。