著者
金武 司 塚本 英範 庄司 晴香 高橋 聡充 星 翼 大橋 さと子 中野 勝彦
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.608-614, 2020-10-25 (Released:2020-10-29)
参考文献数
18

近年,マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)の普及により菌種同定が短時間で可能となった。しかしながら,MALDI-TOF MSではKlebsiella oxytocaとRaoultella spp.はマススペクトルが非常に類似しているため鑑別は困難とされている。そこで今回,MALDI Biotyper(ブルカー・ダルトニクス)におけるK. oxytocaおよびRaoultella spp.の同定能を生化学的性状検査を用いて検討した。当院臨床検体から分離され,MALDI BiotyperでScore Value 2.0以上かつScore Rank 1位の菌名にK. oxytocaもしくはRaoultella spp.が候補として挙げられた124株およびATCC標準菌株2株を対象とした。生化学的性状検査とMALDI Biotyperによる同定結果を比較すると,K. oxytocaは菌種レベルで100%一致し,Raoultella spp.も属レベルで100%一致したが,菌種レベルの一致率は23.5%(8/34)であった。Raoultella spp.の菌種レベルの同定には生化学的性状検査などの追加試験が必要である。