著者
石井 宏明 樋端 恵美子 村山 秀喜 小林 則善 小林 龍彦 床尾 万寿雄
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.185-190, 2021

<p>HbA1cの測定方法は,高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法のほか,免疫法,酵素法など複数存在する.本邦では従来多くの施設でHPLC法が用いられてきたが,近年酵素法や免疫法による測定が増えている.今回,免疫法でHbA1c偽高値を示した異常ヘモグロビンHbCの1症例を経験した.HPLC法では異常低値を示し,酵素法では基準値内,グリコアルブミンは基準値内であった.遺伝子解析で,<i>β</i>グロビン鎖のミスセンス変異によるHbCと診断した.HbCはアフリカに多い異常ヘモグロビン症で,日本人の報告としては非常に稀であるが,国際化に伴って日本でも症例数が増えることが予想される.HbA1cと血糖値に乖離を疑った際には,複数の方法によるHbA1cの測定,グリコアルブミンによる評価等を含めた慎重な対応が必要である.</p>
著者
小口 悟寛 袖山 健 清澤 研道 古田 精市 野村 洋 小口 寿夫 宮坂 誠 矢崎 国彦 笠原 寛 床尾 万寿雄 小岩井 俊彦 徳永 真一 田中 栄司
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.689-693, 1993

透析業務中の針刺傷事故で, HCV抗体陽性の透析患者血に暴露した後, C型急性肝炎を発症し, その後慢性肝炎へ進展したの2症例を経験した. 2例とも, HCV抗体陽性で肝機能が正常の透析患者に使用した注射針を誤って手掌に穿刺した. 1例は針事故後1か月後より全身倦怠感の出現とともにトランスアミナーゼの上昇を認め, 6か月後にはHCV抗体が陽性となった. 他の1例は特に自覚症状の出現はなく, 針事故後4か月目にトランスアミナーゼの上昇を認め, 6か月後にHCV抗体が陽性となった. 2例とも, 肝機能の悪化と改善を繰り返し, 針事故後, 9か月目と15か月目の肝生検による肝組織学的検査では, chronic persistent hepatitisの所見を示した. 2例ともにβ-インターフェロンの投与によりトランスアミナーゼは正常化した.