著者
日山 亨 國弘 真己 朝山 直樹 卜部 祐司 岡信 秀治 小野川 靖二 國弘 佳代子 桑井 寿雄 児玉 美千世 佐野村 洋次 永井 健太 濱田 博重 古土井 明 実綿 倫宏 毛利 律生 吉岡 京子 田中 信治 岡 志郎
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.467-479, 2023 (Released:2023-06-29)
参考文献数
101

プロバイオティクスは日常診療において頻用されているが,現在,その使用ガイドラインは作成されていない.そのため,「広島大学消化器内科関連病院プロバイオティクス使用ガイドライン」を作成した.実地診療における疑問や問題を取り上げ,7(実質10)項目のクリニカルクエスチョンを決定した.作成に当たっては「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver.3.0」に従い,推奨の強さとエビデンスの質を示した.なお,この領域における本邦からのメタアナリシスなど質の高い報告は少なく,委員のコンセンサスを重視せざるを得ない部分も多かった.ガイドラインは現時点でのエビデンスの質に基づいたものであり,医療の現場で患者と医師による意思決定を支援するものである.個々の患者に応じて,柔軟に対応する必要がある.
著者
野村 洋平
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.3-18,214, 2006-05-31 (Released:2016-03-23)
参考文献数
27

This article aims to introduce a new idea of "innocence" to the field of child studies, making use of the thoughts of Emmanuel Levinas and Franz Kafka to shed new light on some of the problems faced by both children and adults in the modern society. Conventional child studies fundamentally lack the perspective whereby a child is seen as what Levinas calls "I'autre (I'autrui)." Levinas emphasizes the importance of "face-a-face" with "Vabsolument autre" as distinguished from a relative other, through the sensitivity of "vulnerability." "Innocence" is a form of power which "infini" takes in a society, a "lotalite" which cannot subsume "infini." When "innocence" enters a society, that society cannot understand nor subsume it (because this "innocence" is one attribute of "infini"'). We must use the sensitivity of "vulnerabilite" to perceive "innocence" coming from "infini." Then we will be able to experience a "face-a-face" encounter with "I'autre (I'autrui)" for the first time. One who can perceive "innocence" through "vulnerability" can receive a power from "infini." Such a person can then become an agent who prompts others to experience "trans-socialization," a new dimension beyond socialization. Franz Kafka was one such person who had a special sensitivity of "vulnerabilite." He was extremely sensitive to "innocence," which made him a superior agent for "trans-socialization". Social problems like bullying, hikikomori (withdrawal from society) and child abuse are possibly caused by our failure to become aware of the sensitivity of "vulnerabilite" and the power of "innocence."
著者
小口 悟寛 袖山 健 清澤 研道 古田 精市 野村 洋 小口 寿夫 宮坂 誠 矢崎 国彦 笠原 寛 床尾 万寿雄 小岩井 俊彦 徳永 真一 田中 栄司
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.689-693, 1993

透析業務中の針刺傷事故で, HCV抗体陽性の透析患者血に暴露した後, C型急性肝炎を発症し, その後慢性肝炎へ進展したの2症例を経験した. 2例とも, HCV抗体陽性で肝機能が正常の透析患者に使用した注射針を誤って手掌に穿刺した. 1例は針事故後1か月後より全身倦怠感の出現とともにトランスアミナーゼの上昇を認め, 6か月後にはHCV抗体が陽性となった. 他の1例は特に自覚症状の出現はなく, 針事故後4か月目にトランスアミナーゼの上昇を認め, 6か月後にHCV抗体が陽性となった. 2例とも, 肝機能の悪化と改善を繰り返し, 針事故後, 9か月目と15か月目の肝生検による肝組織学的検査では, chronic persistent hepatitisの所見を示した. 2例ともにβ-インターフェロンの投与によりトランスアミナーゼは正常化した.
著者
廣川 空美 森口 次郎 脊尾 大雅 野村 洋子 野村 恭子 大平 哲也 伊藤 弘人 井上 彰臣 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.311-319, 2021-05-15 (Released:2021-06-03)
参考文献数
17

メンタルヘルス不調者のサポートのために,地域職域連携が謳われているが,実行性のある取り組みは少ない。とくに小規模事業場は課題が多く,地域と職域との密接な連携による対策が求められる。地域で実践されている好事例や認識されている課題を挙げ,メンタルヘルス対策の連携の阻害要因を整理し,実行性のある連携方法を提案することを目指したシンポジウムを開催した。 産業保健総合支援センターを核にした地域専門医療機関との連携による事例では,地域の専門医療機関の情報提供とその有効活用の工夫が示された。地域における産業保健を支援する医療リソースの把握と事業場への情報提供は産業保健総合支援センターが貢献できる領域である。 京都府では,医師会や行政が,地域の産業医,精神科医,人事労務担当者等関係者間で,連携目的に応じた定期的な会合や研究会を開催しており,多様な「顔の見える」多職種連携が展開され,関係者間で発生する課題や不満も含めて議論されている。 社会保険労務士として企業のネットワークを,障害者雇用に活用している事例では,地元の事業活動の核となる金融機関や就労移行支援事業所等と連携して,有病者や障害者のインターンを中小企業で受け入れるプロジェクトが展開されている。フルタイムの雇用にこだわらず,事業場のニーズと有病者の就業可能性をすり合わせる仕組みは,メンタルヘルス不調者の復職などに応用できる可能性がある。 相模原市では,評価指標を設定しPDCAを回しながら零細企業を対象とする支援を行っている。具体的には,市の地域・職域連携推進連絡会において,中小事業所のメンタルヘルス対策を含めた健康づくりの推進を目的に,事業所を訪問し,健康経営グッドプラクティスを収集して,他の中小事業所の事業主へ周知する取り組みを行っている。 連携の阻害要因には,職場から労働者の家族等に連絡が取りにくい点,メンタルヘルス不調者が産業保健のケアの対象から漏れたときの支援の維持方法,保健師等専門職がいない職場でメンタルヘルスを進める工夫,サービスを展開するマンパワーの不足が挙げられた。職域と地域の連携のギャップを埋めるためには,保健師や臨床医を含む関係者による,それぞれのメリットを求めた連絡会や勉強会等の顔の見える関係づくりは有用で,小規模事業場へのアプローチは健康問題全般の支援にメンタルヘルスを組み込む形で行うことが受け入れやすいと考えられた。