著者
富田 吉敏 庭瀬 亜香 知場 奈津子 小林 仁美 若林 邦江 田村 奈穂 石川 俊男
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.635-643, 2011-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
13

心身症の治療は"心身相関の気づき"を促すことである.摂食障害患者の中には,感情,身体症状,食行動に過剰にとらわれる人たちがいて,おおむね治療への意欲に欠け,抵抗が強い.さらにその中で,発言内容が冗長・緩慢,被害的で疎通が悪く情動不安定などの特徴をもち,内省困難で,"心身相関の気づき"が得られにくい症例がある.心理社会的背景では,社会不適応,学業不良,保護者の無理解など生育環境に問題を呈する,などの特徴をもつ場合が少なくない.当科受診患者(外来および入院)の中で,上述の特徴をもち,同意が得られた症例でWechsler成人知能検査第3版(WAIS-III)を施行した.結果はFIQ55〜79と軽度〜境界域の知的能力に相当する症例が目立った.治療法では,薬物療法の併用,短期入院の繰り返し,家族参加などが有効と思われるが,認知変容は困難であった.