著者
大平 雅之 髙尾 昌樹 佐野 輝典 瀬川 和彦 富田 吉敏 佐藤 和貴郎 水澤 英洋
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.85, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
13

【要旨】新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)では、さまざまな精神・神経症状が急性期症状の回復後、長期に持続し、新たに出現することが知られるようになり、神経症候についてはCOVID-19 後神経症候群(PCNS)と呼ばれることもある。国立精神・神経医療研究センターでは 2021 年6 月より後遺症外来を開設し、このような PCNS あるいは COVID-19 後遺症の患者さんを積極的に受け入れている。当院でも嗅覚障害、記憶障害、不安、うつ状態、疲労など多彩な症候がみられ、その治療は容易ではない。今後は神経内科医を含む複数の専門科が横断的に COVID-19 の長期症状の診療にかかわることが望ましい。
著者
河西 ひとみ 船場 美佐子 富田 吉敏 藤井 靖 関口 敦 安藤 哲也
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.488-497, 2018 (Released:2018-09-01)
参考文献数
38
被引用文献数
1

過敏性腸症候群 (IBS) と自己診断して医療機関を受療する患者の中には, 腸管ガスに困難感をもつ一群が存在する. 本稿では腸管ガスに関連する症状を主訴とする多様な病態の診断と鑑別について述べた後, それらの病態をIBS・機能性腹部膨満を中心とした機能性消化管障害・呑気症・自己臭症のカテゴリに整理し, 治療についてまとめた. 中でも治療に難渋することが多い自己臭症は, 同様の病態がolfactory reference syndrome (ORS) として海外でも報告されている. 筆者らが自己臭症について国内外の治療法の効果研究報告を調査したところ, 現時点でRCTを含む比較研究は存在しなかった. そこで, システマティック・レビューと症例報告を紹介した. それらの文献では, 薬物療法では抗うつ薬を有効とする報告が, 心理療法では行動的介入の有効性の報告が多かった. 行動的介入の有効性の報告からは, わが国で自己臭症患者に適用されてきた森田療法や, 第三世代の認知行動療法のacceptance and commitment therapy (ACT) と治療構成要素の共通性が見出される. 腸管ガスに関連する症状には, 多様な病態が関与しうる. 病態理解と効果的な治療のために, さらなる研究とエビデンスの蓄積が期待される.
著者
富田 吉敏 庭瀬 亜香 知場 奈津子 小林 仁美 若林 邦江 田村 奈穂 石川 俊男
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.635-643, 2011-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
13

心身症の治療は"心身相関の気づき"を促すことである.摂食障害患者の中には,感情,身体症状,食行動に過剰にとらわれる人たちがいて,おおむね治療への意欲に欠け,抵抗が強い.さらにその中で,発言内容が冗長・緩慢,被害的で疎通が悪く情動不安定などの特徴をもち,内省困難で,"心身相関の気づき"が得られにくい症例がある.心理社会的背景では,社会不適応,学業不良,保護者の無理解など生育環境に問題を呈する,などの特徴をもつ場合が少なくない.当科受診患者(外来および入院)の中で,上述の特徴をもち,同意が得られた症例でWechsler成人知能検査第3版(WAIS-III)を施行した.結果はFIQ55〜79と軽度〜境界域の知的能力に相当する症例が目立った.治療法では,薬物療法の併用,短期入院の繰り返し,家族参加などが有効と思われるが,認知変容は困難であった.
著者
船場 美佐子 河西 ひとみ 藤井 靖 富田 吉敏 関口 敦 安藤 哲也
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.330-334, 2021 (Released:2021-05-01)
参考文献数
24

難治性の過敏性腸症候群 (IBS) に対する心理療法の1つとして, コクラン・レビューでは認知行動療法 (CBT) の有効性が示されている. 本稿では, 近年日本で臨床研究が実施されている, IBSに対する 「内部感覚曝露を用いた認知行動療法 (CBT-IE)」 とその構成要素, CBT-IEの臨床研究の動向を紹介する.
著者
富田 吉敏 菊地 裕絵 安藤 哲也
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.849-855, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
6

大学受験は重要なライフイベントだが受験ストレスにより不調を訴える受験生は多い. 筆者は4年間で当科を受診した大学受験生を10例経験した. 現役高校生が9例で, そのうち7例が女性であった. 半数が頭痛を訴え, 8例が検査上で不安を認めた.治療前, 受験終了で症状は軽快すること, 受験ストレスで症状を生じた自身の特徴を把握することが将来的に重要であることを筆者は説明. その後, 受容・傾聴の姿勢で, つらい事柄を吐露させるベンチレーションをコーピングとした対応をとり, ほとんどが受験終了とともに軽快した. 受験ストレスによって心身へ影響がでる機序こそが心身相関であり, その理解を促す心身医学的治療は, 現状を受け止め, 症状の悪化を防止し, 目標を達成する一助を果たしている. 本報告は心身が消耗した予備校生たちを “受験生症候群” とした報告のように, 大学受験で心身が不調となり心療内科を受診した受験生の特徴と治療経過をまとめたものである.