- 著者
-
熊代 克巳
建石 繁明
- 出版者
- 信州大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1989
1.リンゴ、ナシ、モモ及びブドウに対して通常の防除暦に従って薬剤散布を行い、葉の純光合成速度(Pn)、蒸散速度(Tr)及び気孔拡散伝導度(Gs)の消長を調べた。その結果、Pn、Tr及びGs共に、薬剤散布直後には低下し、1日後にはかなり回復するという経過を繰返した。2.供試薬剤のうち最も顕著な抑制作用を示したのはビ-ナイン(主成分SADH)で、正常に回復するには約10日を要した。そして、その抑制は高濃度液ほど、また若齢葉ほど顕著であった。3.リンゴの収穫前落果防止の目的で散布するオ-キシン剤は、Pn、Tr及びGsに対する抑制は軽微で、散布後1日目にほとんど正常に回復した。4.殺虫剤スミチオンの粉剤、水和剤及ぴ乳剤をナシに散布して、Pn、Tr及びGsに及ぼす影響を比較したところ、乳剤の抑制作用が最も著しく、粉剤の影響が最も小かった。5.浸透性の強い展着剤に温州ミカンの葉を浸漬した後、徒手切片を作成して、落射蛍光顕微鏡で観察したところ、浸漬直後には気孔周辺に浸漬1日後には海綿状組織及び柵状組織に、自己蛍光を発生する細胞が認められた。このことから、たとえ肉眼的な薬害症状が認められない場合でも、細胞が何らかの生理的障害を受ていることが推察された。6.各種薬液に葉を浸漬した後に、走査型電子顕微鏡を用いて、気孔の開度を調べたところ、各薬液共に、浸漬直後には気孔の開度を低下させ、高濃度液ほど閉鎖作用が著しかった。ただし、ボルド-液に浸漬した場合には、開閉機能が失なわれて開いたままの気孔が散見された。