著者
弓削 洋子
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.186-198, 2012
被引用文献数
1

本研究は, 教師がひきあげる機能と養う機能という, 2つの矛盾した指導性機能をいかに実践して統合するか, 統合のあり方を各機能に対応する指導行動内容から捉えることを目的とした。小学校教師191名を対象に, 指導行動内容, 学級児童の学習意欲と学習理解度, 規律遵守意欲と遵守度, 学級連帯性について質問紙調査を実施した。その結果, 高学年では, ひきあげる機能の指導行動「突きつけ」と養う機能の指導行動「理解」との間に正の相関があり, 教師がいずれの行動も多く実施するとき, 児童の学習意欲, 規律遵守意欲, 規律遵守度, 学級連帯性の評定値が高いことが示された。中学年では養う機能の指導行動「理解」を多く実施するとき, 規律遵守意欲と遵守度, 学級連帯性の評定値が高いことが示された。但し, 担任学級4~6年児童(34学級, 1,037名)による学習・規律遵守意欲, 学級連帯性評定では, 学級連帯性のみ教師評定と一貫した結果となった。高学年において, ひきあげる機能の指導行動「突きつけ」と養う機能の指導行動との相互促進的な実施が機能統合の具体像として示された。児童の資源や課題性にみる学年の違いが影響したと示唆される。