著者
西森 美香 大原 有理 塩田 祐也 山﨑 美香 弘内 岳
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.92-98, 2019-01-25 (Released:2019-01-25)
参考文献数
8

救急搬送された患者に急性期脳梗塞が疑われる場合,心原性脳塞栓症(cardio-embolic stroke; CE)と非心原性脳梗塞(non-cardio-embolic stroke; non-CE)の鑑別は,治療計画決定のため重要である。今回我々は2016年7月~2018年2月に当院救命救急センターに搬送され急性期脳梗塞が疑われた101例(CE群33例,non-CE群68例)を対象とし,可溶性フィブリン(soluble fibrin monomer-fibrinogen complex; SF),D-dimer測定がCEとnon-CEとの鑑別に有用かどうかについて検討した。発症から入院時までの時間(ΔT(Hr))によって,この急性期群患者を次の2群,超急性期群(ΔT ≤ 4.5)および準急性期群(ΔT > 4.5)に分けて解析した。超急性期CE群において,搬送時SF,D-dimer値はNIHSSまたは退院時のmRSとの間に相関は認められず,SF,D-dimer値は搬入時重症度や予後をあらわす因子とは言えなかった。SF,D-dimer測定値はΔTによる群別に拘わらずCE群がnon-CE群に比べて有意に高かった。CE群とnon-CE群を鑑別するためROC解析を行った結果,超急性期群においてSFを測定項目とすることにより,AUCの最大値が得られた(カットオフ値11.8 μg/mL,特異度97%,感度87%)。このことよりSFの測定が超急性期脳梗塞患者のCEとnon-CEの鑑別の補助診断マーカーとなり得ると考えた。