著者
楊 青山 張 永〓 李 万春 張 会均 朱 宝国 新家 憲 寺本 千名夫 張 志鋼
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
地域総合科学研究センター報告 (ISSN:18815677)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.145-157, 2007

中国内蒙古に広がるカルシューム系アルカリ土壌[saline soil、solonchak(英語)、白干土、塩土(中国語)]の改良を目的とする。2004年〜2006年に行われたplot試験の結果を基に、2006年に大型試験圃場を4段式心土混層プラウを使って2ヶ所建設した。本年(2007年8月)、これらの圃場の土壌および生育調査を行った。主な結果は2007年は生育期(5〜6月)に降雨がなく、その後、雹が100 mm積もって、作物は大被害を受けた。したがって、どの作物も生育は悪かった。馬鈴薯は、一見して、施工区(No. 1)の草丈が対照区(No. 2)より高く、生育がより旺盛であった。えんどう豆は、一見して施工区(No. 3、堆肥供給区)の草丈が高く、他の区より生育旺盛であった。続いて施工区(No. 4、堆肥無供給区)、対照区(No. 5)の順であった。対照区(No. 5)では雑草が旺盛に生育していて、えんどう豆が雑草に埋没していた。No. 1の施工区では、馬鈴薯の平均草丈は375 mmであり、No. 2の対照区では271 mmであった。すなわち1.38倍に増加した。No. 3区のえんどう豆の草丈は230 mmであり、No. 4区では204 mmであり、対照区のNo. 5では155 mmであった。すなわち1.48倍に増加した。馬鈴薯の収量はNo. 1区で0.5 kg/本であり、No. 2の対照区では0.23 kg/本であった。すなわち2.17倍に増加した。No. 1区とNo. 2区では、馬鈴薯の根は両区とも約500 mmの深さまで伸長していた。No. 3区、No. 4区、No. 5区のえんどう豆の根は、それぞれ700、700、600 mmの深さまで伸長していた。No. 1の施工区では、約600 mm深さから土壌硬度が増加した。No. 2の対照区では400 mm深さから硬度が増加した。その間は約2 MPaであった。No. 3、No. 4、No. 5区では深さ600 mmまでは約1 MPaであり、深さ600 mmから硬度が増加した。No. 0区の裸地は耕起したことがないため、地表から硬く5 MPa以上となった。pH値はNo. 0の裸地とNo. 5の対照区で高かった。概して深耕によってpH値の減少が見られた。No. 0の裸地とNo. 5の対照区のEC値が高かった。EC値も、深耕によって減少が見られた。表層(Ap、0 mm)の土壌水分は、どの区も干ばつでほぼ0 %d.b.であった。No. 1、No. 3、No. 4の施工区とNo. 2、No. 5の対照区を比べると、どの層もNo. 1、No. 3、No. 4区の含水比が高かった。すなわち心土(Bca、C層)まで深耕することにより、透水性が増加し、雨水が心土に保持されたものと考えられる。
著者
新家 憲 郭 桂芬 近江谷 和彦 松田 従三 渋谷 義樹 張 会均
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.89-99, 2004-12-30

雨が夏季のみ集中して降る地帯において、夏に降った雨水を地下1mに貯水し、湿害を防ぐと同時に春の干ばつ期に、この水分を毛管水として作物が利用することを試みた。このため地下水層を人工的につくる機械を開発した。高圧空気によって地下に水平空洞(貯水槽)をつくる。ここに砂を充填して人工地下水層をつくる。本報では、この充填する砂の流体的、機械的特性を調べた。これらの値は、砂を充填する装置(サンドガン)の開発に必要である。主な結果は砂の土壌水分が0%から35%d.b.に増加すると、砂のみかけ密度は1250kgm^<-3>から1600kgm^<-1>に増加した。水分が無く乾燥している時は、粒子表面は粗く比表面積は3×10^4m^<-1>〜4×10^4m^<-1>であった。しかし水分が増加して、飽和状態になると、どの砂も比表面積は、ほぼ6×10^3m^<-1>〜9×10^3m^<-1>に減少した。水分が増加するにしたがって、どの砂も空気が流れ難くなって通気係数は減少した。飽和状態の通気係数は3種類の砂で異なった。中国の川砂は粗いため、最も抵抗が少なく、最低通気係数は4kgMPa^<-1>s^<-1>m^<-1>であった。つぎに日本の海砂が抵抗が小さく、3kgMPa^<-1>s^<-1>m^<-1>であった。豊浦標準砂は粒子が細かいため、通気抵抗が大きく、2kgMPa^<-1>s^<-1>m^<-1>であった。ある含水比で粘着力が最大となった。この含水比は3種類の砂で差はなく約10%d.b.であった。粘着力の最大値は3種類の砂で大きな差はなく、約8.0kPaであった。どの砂もある含水比で付着力も最大となった。この含水比は粘着力が最大となる値にほぼ等しく約10%d.b.であった。すべての砂は含水比が上ると内部摩擦角が大きくなり、一定値になった。この傾向は通常の土壌と大きく異なった。
著者
郭 桂芬 張 会均 新家 憲 賈 会彬 近江谷 和彦 松田 従三
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
地域総合科学研究センター報告 (ISSN:18815677)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.63-72, 2007

夏にある程度の雨が降る地帯のアルカリ土壌の新しい改良方法として、心土を焼結することによって土壌を粗粒化して、地下水の毛管上昇を遮断することを考えた。これにより地下水に溶けている塩類が毛管現象によって地表への上昇することが押さえられるし、地表からの水の蒸発を防ぐことができると考えられる。かつ、表土にすでに蓄積されている塩類は、夏の降雨によって下層へ洗い流されると考えられる(leaching)。本報では、土壌焼結の基礎データを得るために、焼結するときの温度である約900℃のアルカリ土壌の熱物性値の1つである比熱を測定した。今後、この値を基にして、実際に土壌を焼結する装置の設計、製作を行う。主な結果として、50〜1300℃の範囲において、温度が増加すると、すべての土壌の比熱は減少するという傾向を示した。50〜400℃の範囲では、すべての土壌の比熱は0.8〜1.1 kJkg^<-1>K^<-1>で一定となり、土壌による差は見られなかった。温度が600℃以上になると、日本の擬似グライ土の比熱は0.5 kJkg^<-1>K^<-1>に一定となった。中国のソロンチャク土壌では表土であるAp層の比熱は少し大きく0.6 kJkg^<-1>K^<-1>に一定となった。心土のBcaおよびC層の比熱はさらに少し大きく0.65〜0.7 kJkg^<-1>K^<-1>に一定となった。中国のソロネッツ土壌はどの層の比熱も0.6〜0.7 kJkg^<-1>K^<-1>に一定となった。ソロンチャク土壌のように土層による明らかな差は無かった。
著者
新家 憲 吉田 光広 郭 桂芬 近江谷 和彦 松田 従三 渋谷 義樹 張 会均
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.101-115, 2004-12-30

雨が夏季のみ集中して降る地帯において、夏に降った雨水を地下1mに貯水し、湿害を防ぐと同時に春の干ばつ期に、この水分を毛管水として作物に利用することを構想した。このため地下水層を人工的につくる機械を開発する。本報では高圧空気でつくられた地下の水平空洞(貯水槽)に砂を充填する装置(サンドガン)の開発について述べる。結果として、最適なサンドガンの構造は、砂をまずインジェクターの中に充填する。高圧空気を、この砂柱の上端に作用させる。したがって砂は連続的に噴出するのではなく、バッチで噴出する構造である。この構造では、例え土がノズルに詰っても高圧空気で、これを吹き飛ばすことができる。中国の砂も、日本の砂も土壌水分が異なると砂をノズルから噴出するのに必要なチャージタンク圧は異なった。両砂とも土壌水分10%d.b.で噴出に必要なチャージタンク圧は最大となり0.4MPaとなった。中国の砂と日本の砂で砂の移動距離はほとんど変わらなかった。土壌水分が10%d.b.の時、砂移動に必要なチャージタンク圧も最大となった。この時、砂移動に必要なチャージタンク圧は0.8MPaであった。砂移動に必要なチャージタンク圧は砂噴出に必要なチャージタンク圧より常に大きくなった。したがって、砂を地下空洞に充填する時、チャージタンク圧は砂移動に必要なチャージタンク圧とする必要がある。ノズルの数が複数あっても、順次抵抗の少ないノズルが働いて砂が噴出し、砂が空洞全体に充填された。
著者
賈 会彬 張 会均 新家 憲 郭 桂券 張 志剛 近江谷 和彦 松田 従三
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
地域総合科学研究センター報告 (ISSN:18815677)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.73-92, 2006

夏にある程度の雨が降る地帯のアルカリ土壌の新しい改良方法として、心土を焼結することによって土壌を粗粒化して、地下水の毛管上昇を遮断することを考えた。これにより地下水に溶けている塩類の毛管による地表への上昇は押さえられるし、例え地下水位が高くとも、地表からの水の蒸発を防ぐことができると考えられる。かつ、表土にすでに蓄積されている塩類は、夏の降雨によって下層へ洗い流されると考えられる(leaching)。すなわち、この方法は地下水位を下げることと同等な効果が期待できる。本報では、土壌を焼結する温度の違いによって、土粒子が、どの程度粗粒化するか、さらに、焼結によって、毛管水の上昇高さが、どの程度減少するかを実験した。主な結果として、土壌焼結によって、起こる現象は、どの土壌も類似していた。焼結温度が高いほど土壌は粗粒化して、土色も黒いガラス質の光沢のある部分が多くなった。焼結していない土壌を蒸留水の中に浸潤させると、土粒子が分散して、細い粘土粒子となり、水の中に懸濁した。この懸濁液は長時間放置しても粘土粒子が細いため、もとにもどらなかった。800℃以上で焼結した土壌では、全く土粒子の水中分散は見られず、水は透明のままであった。すなわち、土壌焼結温度は800℃以上とすべきである。焼結していない壌では、土壌の平均粒径は、すべて0.005〜0.013mmで細かった。これらの土壌を焼結すると急速に土粒子が結合して粗くなり、焼結温度が一番低い600℃の時でも、約4mmとなった。焼結温度が1300℃のように充分高いと、平均粒径は約8mmとなった。焼結していないアルカリ土壌の毛管水上昇高さは、どの土壌も数mと推定される。焼結すると、焼結温度が一番低い600℃の時でも、毛管上昇高さは0.15m以下となった。焼結温度が1000℃以上になると毛管上昇高さは0.09m以下であった。このように、B層のすぐ下の心土を約100mmの厚さで焼結することができれば、毛管による地下水の上昇を遮断することができると考えられる。これによって、蒸発による水の損失を防ぐことができるし、雨季には塩類の洗脱が期待できる。