著者
新家 憲 郭 桂芬 近江谷 和彦 松田 従三 渋谷 義樹 張 会均
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.89-99, 2004-12-30

雨が夏季のみ集中して降る地帯において、夏に降った雨水を地下1mに貯水し、湿害を防ぐと同時に春の干ばつ期に、この水分を毛管水として作物が利用することを試みた。このため地下水層を人工的につくる機械を開発した。高圧空気によって地下に水平空洞(貯水槽)をつくる。ここに砂を充填して人工地下水層をつくる。本報では、この充填する砂の流体的、機械的特性を調べた。これらの値は、砂を充填する装置(サンドガン)の開発に必要である。主な結果は砂の土壌水分が0%から35%d.b.に増加すると、砂のみかけ密度は1250kgm^<-3>から1600kgm^<-1>に増加した。水分が無く乾燥している時は、粒子表面は粗く比表面積は3×10^4m^<-1>〜4×10^4m^<-1>であった。しかし水分が増加して、飽和状態になると、どの砂も比表面積は、ほぼ6×10^3m^<-1>〜9×10^3m^<-1>に減少した。水分が増加するにしたがって、どの砂も空気が流れ難くなって通気係数は減少した。飽和状態の通気係数は3種類の砂で異なった。中国の川砂は粗いため、最も抵抗が少なく、最低通気係数は4kgMPa^<-1>s^<-1>m^<-1>であった。つぎに日本の海砂が抵抗が小さく、3kgMPa^<-1>s^<-1>m^<-1>であった。豊浦標準砂は粒子が細かいため、通気抵抗が大きく、2kgMPa^<-1>s^<-1>m^<-1>であった。ある含水比で粘着力が最大となった。この含水比は3種類の砂で差はなく約10%d.b.であった。粘着力の最大値は3種類の砂で大きな差はなく、約8.0kPaであった。どの砂もある含水比で付着力も最大となった。この含水比は粘着力が最大となる値にほぼ等しく約10%d.b.であった。すべての砂は含水比が上ると内部摩擦角が大きくなり、一定値になった。この傾向は通常の土壌と大きく異なった。
著者
正富 宏之 百瀬 邦和 松本 文雄 冨山 奈美 青木 則幸
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-26, 2004
被引用文献数
1

タンチョウ Grus japonensis が生息する北海道東部と北部において、2004年4-5月に航空機を用いて繁殖状況を調査した。その結果、従来の分布域のほかに初めて道北のサロベツ原野に1繁殖番いを認めた。調査回数が前年より少ないにもかかわらず、繁殖番い数は282番いで8番い多く、前年比増加率2.9%を保ち、地方別では根室地方で減少したが十勝・釧路両地方で増加し、特に十勝では過去最多を記録した。繁殖番い密度は現存湿原面積1km2あたり平均0.54番いで、十勝と根室両地方で1.21-1.73番と高く釧路地方が0.45番いと低いのは従前と同様であった。営巣地点の環境は77.9%が、開けた湿原地や低・高木が散在する湿地などで、ハンノキを主とする湿地樹林内営巣は全体の5.2%(N=16)であった。また、営巣地点以外のツル目撃箇所のうち11.5%は、牧草地などの農地であった。5月の家族数は76組で、雛を98羽確認したが、根室地方では繁殖活動中番いのうち家族が37.3%に過ぎず、孵化の進行が他地方より遅れていた。今年の特色として、最初の営巣等に失敗して同一行動圏内で再営巣したと思われる例が33例あり、繁殖番いの11.8%と高い割合を示したが、原因等は不明であった。
著者
寺本 千名夫
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.47-71, 2004-12-30

北海道(特に札幌市)においても、本州より遅れたとはいえ、都市型農業の展開が見られるようになってきた。具体的には、農家の直売、さっぽろとれたてっこ事業、さとらんど、さっぽろ農学校、いちごフェア等の事業である。さっぽろとれたてっこ事業は、市内農家の朝どり野菜を市場、小売店等の既存の流通ルートを利用して消費者に供給する事業である。さとらんどは、農業交流体験施設で、事業費250億円、面積102haにも及び交流、生産支援、酪農のゾーンに分かれ、年間40万人もの入園者がある。さっぽろ農学校では、農業に関心を持つ市民が2年間講習を受け、就農、さらにはNPO法人化を検討するまでになっている。いちごフェア等は、いちご、果樹生産者と商工業者、市民との交流を基礎においている。課題としては、札幌市の都市型農業は、どちらかと言えば行政主体で、農家側の活動が消極的であることが指摘される。この点の克服が必要である。
著者
孫 権 新家 憲 寺本 千名夫 賈 会彬 郭 桂芬 王 衛 李 亮 巽 〓 趙 智 近江谷 和彦 松田 従三
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.79-95, 2005-12-30

中国河北省に広がるカルシューム系アルカリ土壌[saline soil、solonchak(英語)、白干土、塩土(中国語)]の改良を目的とする。2001年7月に4段式心土混層プラウによって大形試験圃場(60cmの深耕)が作られた(plough区)。対照区としてAp層のみ耕起されている区(Ap tilled区)とした。本年は施工後4年目になる。これとは別に2004年7月に3種類のplot試験圃場を設置した。ここは施工後、第1年目である。本年(2005年7月)、これらの圃場の調査を行った。主な結果は大形試験区ではplough区の植生がAp tilled区より勝っていた。plough区では植物の根は40cmの深さまで見られた。Ap tilled区では、植物の根は20cmの深さまでは見られたが、その下には存在しなかった。Ap tilled区は深さ20cmの土壌硬度は5MPaを超えover scaleしたplough区は50cmまで2MPaであった。施工後4年が経過したが、土壌硬度はまだ元に戻っていなかった。plough区のAp層のpHが下がった。plough区のEC値は全層にわたってAp tilled区のEC値より小さかった。plot試験区ではsand+manure区が植生が最も良かった。次にsand区で、最も悪かったのはAp tilled区であった。Ap tilled区は深さ20cmを超えると、土壌硬度は5MPaを超えover scaleした。sand区は深さ55cmまで2MPa以下であり、sand+manure区は1MPaであった。したがって、耕起後1年では全く土壌硬度は元に戻らなかった。どの区も時間が経過するとpH値は減少した。地表ほどpH値は低かった。Ap tilled区のようにAp層のみを耕起してもpH値の減少は起こった。しかしsand区に比べると、深いC層のpH値の減少は遅かった。耕起する深さは深いほうが、深いC層のpH値の減少がおこる。EC値も、すべての試験区で、時間が経過すると減少し、裸地のEC値より大幅に減少した。砂層を設置する効果と、深く耕起する効果は同じことと考えられる。これは地下水の毛管上昇が遮断されることと、透水性が上昇するから、夏の降雨によって土壌中に堆積している塩類(CaCO_3など)が洗い流されることが考えられる。
著者
溝延 学
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.37-45, 2004-12-30

セイロンベンケイソウの葉切片からの茎葉の分化に及ぼす培地条件および培養中の環境条件について詳細な検討を行った。セイロンベンケイソウの葉切片からの茎葉の分化には、MS培地にBA 1ppm添加した場合が、最も効果的であった。また、茎葉の分化には、MS培地のミネラル類は、通常濃度が必要であることも明らかになった。セイロンベンケイソウの葉切片からの茎葉の分化に及ぼす培養中の諸条件についても検討したところ、培養中の温度は25℃が適当で、光条件は特に必要としていなかった。高濃度の酸素は茎葉の分化を促進し、高濃度の二酸化炭素は茎葉の分化を抑制する傾向が認められた。
著者
郭 桂芬 信田 哲宏 賈 会彬 新家 憲 井出 成一 郭 献山 李 忠貴 近江谷 和彦 松田 従三
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.105-111, 2005-12-30

中国黒龍江省嫩江は少雨、寒冷地帯である。年間降水量は550〜600mm、年平均気温は-0.1℃である。この地帯の主要作物は大豆(油用)である。大豆などの作物を春に播種するとき、5月には降雨がほとんど無く、かつ気温が急降下することがあり、発芽が不安定である。このため、土壌水分の蒸発を防ぐことと、地温を上げるため、マルチ栽培が慣行化している。大豆栽培において、成長期の7月中旬に、このマルチフイルムを剥ぎ取らなければならない。7月中旬以降は降雨季に入り、雨水が地中へ浸透し易くするためである。さらに大豆が大気中の窒素を固定するため、マルチフィルムが妨害になるためである。現在、マルチフィルムの剥ぎ取り作業を全く人手で行っている。面積が広大であることと、マルチフィルムは纏まれば重量物となり、炎天下で、腰を曲げて行う作業であるため極めて重労働である。当研究では、このマルチフィルムを剥ぎ取る機械を開発することを目的とする。対象作物は大豆とする。主な結果は日本のらくはぎマルチフィルムのスリットから風が通るため、土壌との密閉が良くなく、雑草が生えてきた。中国黒龍江省嫩江県は春の播種期にほとんど雨が降らない、かつ風が強いため、スリットから水分がどんどん蒸発してしまう。保温、保湿の意味が薄くなった。日本のらくはぎマルチフイルムの厚さは0.02mmである。中国現地のフイルムの厚さは0.008mmである。コストの面で現地の農家にとって実用性に問題がある。紙マルチは弾力性がないため、機械で紙マルチを引く作業が極めて難しい。また、圃場は、かなり平らでなければ、紙マルチはすぐに破れてしまう。このため設置作業が難しい。紙マルチは雨に濡れると伸び、乾燥すると縮むため、2ヶ月の間に破れた。このためマルチの意味がなくなる。中国のマルチフィルムは巻き取るとき、すぐ切れた。これは0.008mmと薄いことと、黒龍江省では春の播種期の時、風が強いため、マルチをするときに必ずマルチの両端に多くの土をかけなければならない。この土は夏の雨で濡れ、非常に固くなる。このため両端の土壌が抵抗になってフイルムが切れた。これを解決するために、フイルム両端の土壌土壌をあらかじめ耕起して、土を落とすチゼルを今後、開発する必要がある。
著者
新家 憲 郭 桂芬
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.181-192, 2001-12-30

中国黒竜省の三江平原は年間降水量がわずか500〜600 mmである。さらに降水が一様でなく60〜70%が7〜8月に降る。冬と春はほとんど雨が降らない。夏に降った雨を地下に保持しておくため、高圧空気で地下ダムを人工的に作ることを試みた。人工の地下ダムをつくるには水平の土壌空洞を地下につくる必要がある。そこで本報では、まず種々の土壌の通気係数を測定し、通気係数がどのような値の時に水平の空洞が生じて土壌が破壊するかを明らかにした。主な結果として、通気係数kの値が10^1 m^2/sMPaのとき、空気圧送によって土壌が流動現象で壊れるかV型に壊れるかの境界である。通気係数kの値が10^1〜10^<-1> m^2/sMPaの値の時、空気圧送によって土壌はV型の破壊が起り、10^<-1>m^2/sMPa以下では空洞の形成が起った。10^<-1> m/sの値は、この境界値と考えられる。本報の目的である白漿土のB層および草旬土のCgl層に空気圧送によって、水平の空洞を形成しようとする時、k値が10^<-1> m^2/sMPa以下になるためには、両層とも土壌水分が30% d.b.以上である必要がある。
著者
新家 憲 郭 桂芬 渋谷 義樹
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.53-66, 2003-12-30

中国の河北省と内蒙古自治区は年間降水量がわずか300〜400 mmである。さらに降水が一様でなく70%が7〜8月の夏に降る。冬と春はほとんど雨が降らない。この地帯の土壌は白干土と言われ、非常に硬く、不透水層を形成している。このため土壌は、この雨水を吸収できず大部分が表面水として流出してしまう。夏に生じた過剰表面水を、この不透水層を利用して、白干土の地下に保持しておくことを構想した。このため、高圧空気で地下水層を人工的に作ることを試みた。この地下水層の水は、春の早ばつ期に毛管水として、牧草に利用される。人工の地下(ダム)をつくるには水平の土壌空洞を地下につくる必要がある。そこで本報では、まず種々の土壌の通気係数を測定し、通気係数がどのような値の時に水平の空洞が生じて土壌が破壊するかを明らかにした。主な結果として、通気係数k_aの値が5 kg/smMPaのとき、高圧空気圧送によって土壌が流動現象で壊れるかV型に壊れるかの境界である。通気係数k_aの値が5〜0.2 kg/smMPaの値の時、空気圧送によって土壌はV型の破壊が起った。0.2 kg/smMPa以下では水平空洞の形成が起った。0.2 kg/smMPaの値は、この境界値と考えられる。本報の目的である白干土のBca層またはC層に空気圧送によって、水平の空洞を形成しようとする時、k_a値が0.2 kg/smMPa以下になるためには、両層とも土壌水分が25% d.b.以上である必要がある。
著者
新家 憲 吉田 光広 郭 桂芬 近江谷 和彦 松田 従三 渋谷 義樹 張 会均
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.101-115, 2004-12-30

雨が夏季のみ集中して降る地帯において、夏に降った雨水を地下1mに貯水し、湿害を防ぐと同時に春の干ばつ期に、この水分を毛管水として作物に利用することを構想した。このため地下水層を人工的につくる機械を開発する。本報では高圧空気でつくられた地下の水平空洞(貯水槽)に砂を充填する装置(サンドガン)の開発について述べる。結果として、最適なサンドガンの構造は、砂をまずインジェクターの中に充填する。高圧空気を、この砂柱の上端に作用させる。したがって砂は連続的に噴出するのではなく、バッチで噴出する構造である。この構造では、例え土がノズルに詰っても高圧空気で、これを吹き飛ばすことができる。中国の砂も、日本の砂も土壌水分が異なると砂をノズルから噴出するのに必要なチャージタンク圧は異なった。両砂とも土壌水分10%d.b.で噴出に必要なチャージタンク圧は最大となり0.4MPaとなった。中国の砂と日本の砂で砂の移動距離はほとんど変わらなかった。土壌水分が10%d.b.の時、砂移動に必要なチャージタンク圧も最大となった。この時、砂移動に必要なチャージタンク圧は0.8MPaであった。砂移動に必要なチャージタンク圧は砂噴出に必要なチャージタンク圧より常に大きくなった。したがって、砂を地下空洞に充填する時、チャージタンク圧は砂移動に必要なチャージタンク圧とする必要がある。ノズルの数が複数あっても、順次抵抗の少ないノズルが働いて砂が噴出し、砂が空洞全体に充填された。
著者
新家 憲 郭 桂芬 近江谷 和彦 松田 従三 賈 会彬 石 風善 李 東才
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.143-147, 2004-12-30

アルカリ土壌の改良を目的として4段式心土混層プラウが設計試作された。2003年5月に、この4段式心土混層プラウで中国黒龍江省大慶市で試験圃場が施工された(2ha)。2004年7月に、この試験圃場で土壌調査、および作物の生育調査を行った。主な結果は対照区では表層0〜5cm(Ana層)に2.5MPaの硬い層があった。その下は深さ90cmまで1.0〜1.5MPaであった。処理区は表層も軟らかく、深さ90cmまで0〜1MPaであった。したがって1年間で土壌硬度は復元しなかった。処理区も対照区も、pH値は9-10であり、きわめて強いアルカリであった。したがってB層への堆肥施用だけでは、pH値を下げることはできない。pH値を下げるには、毛管による地下水の上昇を遮断する方法など、他の方法を考える必要がある。処理区の水分は対照区の水分より明らかに高かった。処理区では降った雨が深さ30〜50cmの心土(B層、C層)に保持されていた。対照区の表層であるAna、A層の水分が約5%d.b.と低かった。この理由は降雨があっても、土壌硬度が高く、クラストしているため、土壌中に浸透できず、表面水として流れ去ってしまうものと考えられる。一見して処理区と対照区の草丈に大きな差があった。処理区の野生草の草丈は約45cmであるのに対して、対照区では15cmであった。処理区では根は、C層に達していて、約50cmであった。対照区では、B層まで達していて、その深さはせいぜい30cmであった。
著者
小林 昭裕
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-12, 2003-12-30

自然公園における過剰利用抑制策として車両規制が各地で導入されている。車両規制の実施には利用者の理解が不可欠であり,利用者から見た車両規制の評価を踏まえ,現在の車両規制制度の課題を検討する必要がある。本研究では,1997年から車両規制を導入した大雪山国立公園高原沼めぐり地区および1999年から車両規制を導入したカムイワッカ地区を事例に,1999年〜2001年の3ヵ年にわたる車両規制に対する利用者の評価をもとに,利用者の車両規制に対する支持に関与する要因を捉え,利用規制に対する利用者からの支持・理解を得るための課題について検討した。また,3ヵ年にわたる調査結果から,調査手法上の課題について検討を加えた。