著者
張 晴原 浅野 賢二
出版者
筑波技術短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

筆者らが開発した簡易人口推計法に基づいて,2050年までの中国のGDP,エネルギー消費量および食糧消費量の推計を行っている。中国の1人あたりGDP実質成長率は1990年の10%から2025年に3%に,さらに,2035年には2%になるように仮定すれば,2050年のTFR別のGDPはそれぞれ32兆元,35兆元および40兆元となり,1990年の17倍,19倍および22倍になる。統計データによれば,中国の1990年の1次エネルギー消費原単位は373Toe/百万元(1947Toe/百万\に相当)であり,同時期のアメリカの391Toe/百万\,日本の150Toe/百万\と比べてはるかに高い。その原因として,エネルギー利用技術レベルの低さによるエネルギー効率の悪さや製造業を中心とした産業構造が考えられる。したがって,エネルギー利用技術の開発や技術移転,省エネルギーの促進,産業構造の転換などによって,1次エネルギー消費原単位を先進国の1990年レベルまで引き下げる可能性が十分あると思われる。中国のエネルギー原単位が1990年から同一比率で低下し,2050年には200Toe/百万\(1990年実質価格)(38Toe/百万元)になるように仮定すると,1次エネルギー消費量を求めることができる。2020年までは,中国のエネルギー消費量が増加し続け,2022年以降は減少に転じる。その原因として,2020年以降はGDPの成長率が低下し,エネルギー消費原単位の低下率(省エネルギー率)が3.64%で一定であるためと考えられる。1990年における中国1人あたりの食糧消費量は375キロであり,1990年からの最初の35年間は0.75%,次の10年間は0.60%,以降2050年までは0.40%の率で増大するとすれば,合計特殊出生率が1.70,1.87および2.10のとき,2050年の食糧消費量はそれぞれ7.2,8.0,9.2億トンとなり,1990年の1.7倍,1.9倍,2.1倍である。