著者
川島 光郎
出版者
筑波技術短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

聴覚障害者への音楽リズム情報の伝達手段として新しく皮膚電気刺激を取り上げ,手軽に利用できるパソコンベースのシステムを作成し,その基本的性質を調べた.すなわち,刺激電圧パルスの波形と強度,皮膚電極形状とその装着位置,電極装着個数と音楽リズムの複雑さ、感度や不快感などとの関係を調べた.また,リング状の電極を指につけた場合について,MIDIキーボードを弾く例を取り上げ,音や光など他のリズム伝達方法と比較した.これらの結果から,パルス幅0.2〜2ms、印加電圧20〜80Vの範囲で各人の特性により調整することにより、痛みなどの不快感を最小限にとどめ,音楽信号の伝達方法の1つとして使用可能であることが分かった.従来,聴覚障害者への音楽同期情報は,残存聴力を利用する通常の音響出力や機械的振動,あるいは映像やランプなどの視覚情報が用いられて来たが,この直接電気的に感覚神経を刺激する方法は応答時間が早く,顔の向き(視線方向)に左右されない情報伝達手段として,低周波音響や機械的振動に替わり,とくに合奏やダンスなどの集団動作の同期をとる場合に有用である.障害者個々の特性に応じ他のマルチメディアと併用して利用するのが実際的と考えられる.またこの方法は体性感覚を使うことから視聴覚に重複障害をもつ人々のコミュニケーション手段としても利用が可能で、今後この分野でも開発が期待できる.
著者
原 俊介 河原 正治 大武 信之 佐藤 浩史
出版者
筑波技術短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

(1)現在、中途失明者の多くが点字の書き方の学習には比較的容易に取り組むことができても、点字触読の学習には困難を感じていると言われている。点字触読の学習の初期の段階では、大きな点字、またはマス間や行間の広い点字を用いる方が効果的な場合もあると思われるが、現存のほとんどの点字印刷機器では、点字の大きさ、間隔等が標準サイズに固定されているため、標準と異なるサイズの点字のテキストを作成するには多くの困難を伴う。この問題を解決するため本研究では、点字における、点の直径、2点間の間隔、マス間、行間などをユーザーの必要に応じて自由に設定できる点字印刷システムの開発を行った。このシステムを利用して、点字使用者の点字習熟度、または使用者の触覚の機能にあった点字印刷物の作成が可能になるとともに、点字触読の能力を高めるための学習、点字触読の過程及び点字パターンの認識を規定する諸要因の研究、読みやすい点字サイズの研究等が促進されることが期待される。(2)情報処理機器の発達により、視覚障害者の情報収集は比較的容易になってきたが、情報発信、特に数式等を含む科学技術文書の作成にはまだ困難が伴い、晴眼者の助力が必要になることが多い。我々は視覚障害者自身で数式を含む科学技術文書の作成を可能とするため、Windows上で動作するLaTeX文書作成支援システムを開発した。このシステムはWindows画面読み上げソフトウェアを用いて音声出力を行う。このシステムを用いることで視覚障害者はLaTeX文書の修正および作成した文書の確認が容易に行える。我々は実用に耐えるシステムをほほ完成した。現在このシステムを搭載したノート型パソコンを筑波技術短期大学及び他の機関に設置して、全盲の学生及び研究者に数式を含むLaTeX文書作成時における実際の利用及びシステム・チェックを兼ねた支援システムの検証作業の協力を依頼し、LaTeXコマンドの追加、LaTeX文書作成時におけるエラー・メッセージの改良等を続けている。
著者
石田 久之
出版者
筑波技術短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

■点訳或いは音訳(対面朗読などを含む)ボランティア活動を行なっている団体に、会員数、活動形態、養成、活動の問題点などを対面或いは電話によりインタビューした。■【ボランティア団体への入会に際して】ボランティアというものは、その能力に左右されず、ただ個人の自発的な意志によってのみ、活動が保障されるものであると思われるが、残念ながら誰でもが自由にボランティア活動に参加できるものではない。それは、活動の質というものが問われるからである。点訳・音訳活動については、点字図書館や社会福祉協議会などでボランティア養成講座が開講されている。これら養成講座の受講をボランティア団体への入会の条件としている場合がある。点訳の場合、点の打ち方や、分かち書きを知る必要がある。音訳の場合、発声の仕方、読み方など普通の会話とは違った、聞き易い読み方があり、それらをある程度自分のものにしておかなければならないのである。養成講座の受講が必要な団体、必要でない団体の数は、音訳、点訳を問わず、ほぼ半々となっている。それぞれの主張するところは、必要とする場合、先に挙げた理由の他に、現在では、点訳物・録音物の貸し借りは全国規模に広がっており、全国水準の力量が必要であり、それに合わせるためには、入門講座の受講は最低限必要というものである。他方、必要としないという団体の主張は、善意を基礎としての活動であり、入りたいと考える人には、是非来て頂きたいとの理由である。しかし技量がどうでも良いというわけではなく、入ってからの勉強の重要性は十分認識されている。■【養成講座主催者側から見た課題】点訳・音訳養成講座は、ボランティア団体への入会窓口という側面を持っている。そのような立場から養成講座受講者をみると、(1)定着率の低さ、(2)若い人の少なさ、(3)有償で働きたいという人が少なくないというような課題がある。
著者
加藤 宏 皆川 洋喜
出版者
筑波技術短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は視覚障害者のための高等教育レベルでの教材、特に図的教材の視覚障害者向け適性化と活用支援システム構築のための基礎的研究である。重度視覚障害者のための教材には点字と触図があるが、触図はグラフィック情報であり、1次元の情報ではない。結論としては図も、視覚障害者向けには文字記述形式などへの1次元情報化が推奨されることが示された。触図についてはセンター試験の点字問題の視覚障害者による解答過程と触察行動を観察した。結果は成績は、図形式へのリテラシィと教科内容についての知識の2要因に影響されることが示唆された。特にグラフ形式についての習熟が、触図の読みとりに大きく影響した。チャートや模式図・地図等の触図は、その形態・内容を比較的容易に触察できた。触図では、触覚で形の認知という問題以上に、その事象についての知識と図の諸書式への習熟、軸の意味理解等が鍵となることが示唆された。このことはキャプション情報で軸説明などを補足すれば、特別な変換を行わない原図に近い触図で対応できるということである。触図にはキャプション等が必須であることも示唆された。弱視用教材研究には眼球運動測定装置を導入した。図とテキストを含むドキュメントを解読中の眼球運動からテキスト理解に及ぼす図の外的資源機能を探った。弱視者の場合、CRT画面上の文字と図を読ませるという方法では、注視点の記録が困難である場合があることが分かった。さらに眼疾別に適切な拡大提示法を検討する必要がある。諸外国における視覚障害者への図情報提示の実態調査も行った。スウェーデンでは、視覚障害者用の大学適性試験では図は削除か文による説明に代替された。ドイツでは大学の点訳教科書では、数式や図形はマークアップ言語による線形的記述か言語説明に代替された。図情報もテキスト文と同じくテキスト情報として一元化管理されることが有効であることが示唆された。
著者
張 晴原 浅野 賢二
出版者
筑波技術短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

筆者らが開発した簡易人口推計法に基づいて,2050年までの中国のGDP,エネルギー消費量および食糧消費量の推計を行っている。中国の1人あたりGDP実質成長率は1990年の10%から2025年に3%に,さらに,2035年には2%になるように仮定すれば,2050年のTFR別のGDPはそれぞれ32兆元,35兆元および40兆元となり,1990年の17倍,19倍および22倍になる。統計データによれば,中国の1990年の1次エネルギー消費原単位は373Toe/百万元(1947Toe/百万\に相当)であり,同時期のアメリカの391Toe/百万\,日本の150Toe/百万\と比べてはるかに高い。その原因として,エネルギー利用技術レベルの低さによるエネルギー効率の悪さや製造業を中心とした産業構造が考えられる。したがって,エネルギー利用技術の開発や技術移転,省エネルギーの促進,産業構造の転換などによって,1次エネルギー消費原単位を先進国の1990年レベルまで引き下げる可能性が十分あると思われる。中国のエネルギー原単位が1990年から同一比率で低下し,2050年には200Toe/百万\(1990年実質価格)(38Toe/百万元)になるように仮定すると,1次エネルギー消費量を求めることができる。2020年までは,中国のエネルギー消費量が増加し続け,2022年以降は減少に転じる。その原因として,2020年以降はGDPの成長率が低下し,エネルギー消費原単位の低下率(省エネルギー率)が3.64%で一定であるためと考えられる。1990年における中国1人あたりの食糧消費量は375キロであり,1990年からの最初の35年間は0.75%,次の10年間は0.60%,以降2050年までは0.40%の率で増大するとすれば,合計特殊出生率が1.70,1.87および2.10のとき,2050年の食糧消費量はそれぞれ7.2,8.0,9.2億トンとなり,1990年の1.7倍,1.9倍,2.1倍である。