著者
張 英裕 宮崎 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1_1-1_10, 2013-05-31 (Released:2013-07-30)
参考文献数
10

台湾において寺廟の屋根は人間と神の境界線と、神への敬意が最も表現される場所である。故に、寺廟の屋根は民家、寺院、祠堂などの素朴な屋根と大きく異なり、そこには想像上の動物や熟知されている古典物語などが飾られている。大量尚且つ華麗な装飾を設置する事によって、人々は祈願が神に届き、達成されるようにとの願いを込めているのである。本稿は台湾雲林県北港鎮にある朝天宮で現地調査を行い、その結果,それらの装飾は華麗に見せるために設置されただけではなく、各自に意味がこめられ、一定な規則に沿って製作され、設置されることを明らかにしたものである。その装飾動機は1.構造の強化と美観の向上、2.凶事を避け吉事を招き入れる、3.理想境の追求と教化、4.神への表敬である。また装飾原則は1.地位序列原則、2.対称原則、3.地から天への原則、4.中央収束原則。加えて吉祥、教化、防災などを目的とする。
著者
張 英裕 黄 佳琪
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

本稿は1979年の手工業産品評審会から現行の工芸の夢まで入選した陶磁器に基づき、Formalisticaと社会学でその造形を分析し、その変遷をまとめるものである。台湾における陶磁器のスタイルの変遷について、下記のように三つの時期に分けることができる。(1)素朴期(1979~1992)この時期の作品には素朴と豪華の2極化傾向が見られる。そして造形において、両者ともシンプルなスタイルを保っているが、装飾紋様では簡単な色使いと精緻な絵画の二種類に分けられる。(2)転変期(1993~1998)欧米や日本などの先進国から技術とコンセプトを作品に取り入れることにより、その造形が大きく影響され、ユニークな作品が多数現れた。造形の突破こそがこの時期の一大特徴と言える。(3)設計重視期(1999~)この時期の作品には主に二方向性が見えてくる。一つはシンプル且つ生活感が溢れる方向性で、もう一つは創意と精緻さを求める方向性である。しかし、両者ともデザインの重視ということは不変である。
著者
張 英裕 宮崎 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.63-72, 2001-11-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
27

「剪黏」とは、割れた茶碗の破片や色ガラスなどを利用して必要な形に刻み、作品の表面に一つ一つ丁寧に貼ることによって制作される、寺廟建築の屋根装飾である。本稿では、文献調査ならびに中国南部沿岸地域および台湾における現地調査に基き、「剪黏」の起源・変遷・制作過程について考察した。その結果、次の諸点を明らかにした。(1)中国大陸における「剪黏」は、南部沿岸の泉州地域において、清時代1700年前後に生誕したと思われる。また、ほぼ同時代に、その制作方法が台湾に伝えられた。(2)「剪黏」制作の主たる素材は、かつては茶碗や花瓶などの破片であったが、最近では、専用陶片が使用されるようになっている。専用陶片の出現は、「剪(切る)」と「黏(貼る)」からなる本来の「剪黏」造形における「剪(切る)」の作業を不要にし、職人の即興的創作性を喪失させた。この傾向は、台湾において著しい。(3)「剪黏」の主たる制作過程は、針金による原形制作、筋肉材の原形への付着、外観材の粘着に分けられる。
著者
張 英裕 宮崎 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1-10, 2002-09-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
15

本論文は、台湾における寺廟建築の装飾技術「剪粘」を支えた職人集団の出自と組織構成の解析を中心として、その実像を明らかにしたものである。歴史的資料の解析、ならびに、「剪粘」職人へのインタビューを通し、次の諸点を明らかとしてた。(1)台湾における「剪粘」職人の起源は、17世紀後半に中国大陸東南海岸一帯から渡台した漢人たちが、寺廟建設のために招請した中国大陸の建築職人である。(2)建築職人は、大別して「大木」「小木」「土水」「石作」「漆絵」「陶塑」から構成されていたが、「剪粘」は、「泥塑」「交趾陶」とともに、「陶塑」に帰属していた。(3)「剪粘」の職人集団は「師匠」「出師」「未出師」からなり、技術伝承は「異姓拝師」「家族伝授」による「師徒制」に依拠していた。(4)個々の「剪粘」職人集団には請負仕事における空間的テリトリーがあり、たいていの場合、テリトリーの遵守が規範とされていた。(5)1970年代からの台湾の工業化の伸展とともに、「専用陶片」や既製の装飾部材が出現し、伝統的な寺廟の装飾技術としての「剪粘」は衰退の一途を辿っている。
著者
張 英裕 邱 奕程 劉 靜文 歐 耘秀
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>「捏&#40629;」とはいわゆる日本のしん粉細工である。本来中国伝来の民間工芸の一つであり、中国では面塑、面花、礼&#39309;、花&#31957;と呼ばれる。その材料は主に小麦粉及びもち米粉で、水と塩あるいは砂糖を入れ、かき混ぜたあとに蒸し、着色し、できた生地である。そして「捏&#40629;人」はこの多彩な生地及び小さな鋏などの道具を使い、実在である動物、植物、花、人物や空想上の神仙、龍、鳳凰、麒麟などの造形物を製作する。<br/>台湾における捏&#40629;人は昔冠婚葬祭、長寿祝い、祭典などの民間イベントに多用されており、食べることもあったが、時代の変化とともに、材料も前述した食用材料から化学材料と変わってきており、現在は観賞用だけで、食用不可となっている。</p>