著者
松山 優治 当麻 一良 大脇 厚
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.63-74, 1990-08-31

東京湾の青潮の発生と伝播に関する数値実験を行った.観測に依れば,青潮は成層期に下層の貧酸素水が表面近くまで上昇することにより起こり,下層水の湧昇には北よりの風が寄与しているとされている.実験では湾奥から湾口に向かう風(北東風)を与えた時,千葉県側の湾東部と湾奥部に湧昇が現れ,風が止むと湧昇域は沿岸に沿って反時計周りに移動することが示された.また移動速度は内部ケルビン波の位相速度と一致していた.風の連吹時間を長くすると,湧昇は強くなるが,風の止んだ後の湧昇の移動速度は変わらない.また,夏季に比べて初秋は北よりの風の頻度が増えること,さらに成層が弱くなることから,湧昇が起こり易く,移動速度も遅いことから青潮に長時間さらされる湾奥の千葉や船橋では被害は大きくなることが解った.