著者
鈴木 和雄 青木 雅信 水野 卓爾 石川 晃 影山 慎二 宇佐美 隆利 麦谷 荘一 牛山 知己 藤田 公生
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.809-814, 1996-05-20
参考文献数
22
被引用文献数
8 2

(目的)腹膜外到達法による腹腔鏡下副腎摘除術について手技的問題を中心に検討した。(対象・方法)1994年7月より1995年3月までに副腎腫瘍9例(男4例,女5例,30歳から79歳,平均56歳)に対して本手術を施行した。術前診断は原発性アルドステロン症2例,18-ハイドロキシコルチコステロン産生腫瘍1例,プレクッシング症候群5例,内分泌非活性腫瘍1例であった。手術は全身麻酔下,側臥位にて施行した。皮膚小切開よりバルーンにて後腹膜腔を剥離後炭酸ガス送気を行った。トロカールは計4本留置した。腎上極を露出後,腎周囲脂肪組織を上内側に向かい剥離した。副腎全周を剥離後副腎静脈にクリップをかけ切断した。(結果)9例全例に腫瘍摘出に成功した。平均手術時間,平均出血量はそれぞれ53ml,168分であった。術中合併症は見られなかった。術後後腹膜血腫が1例に見られたが5日間の安静にて軽快した。(結論)腹膜外到達法の有用性は開放性手術において既に確立されている。腹膜外到達法腹腔鏡下副腎摘除術は,術野が狭く,手技がやや難しいといった問題点はあるものの,安全かつ低侵襲であり,褐色細胞腫を除いた片側性の小さな副腎腫瘍に対して有用な手術法と考えられた。