著者
坂本 考司 原水 聡史 征矢 智美 中野 詩織 松本 雅之 中村 純二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.247-252, 2022-09-20 (Released:2022-09-20)
参考文献数
25

化粧品の触覚情報は感性・情緒的価値をもたらす要素の1つである。これまでに,両手で顔の肌に穏やかに触れることで快感情を喚起するハンドプレス刺激の継続により,「キメの整い感」等の肌の質感が向上することが報告されているが,詳細なメカニズムは明らかではない。本研究では健常日本人女性を対象に,主に脳で合成されるホルモンのオキシトシンに着目し,検討を行った。その結果,快感情を喚起する触覚刺激の1つである前腕へのチークブラシ刺激の継続で,定常状態(ベースライン)のオキシトシンが上昇し,さらに試験参加者の88%が肌状態の変化を実感していた。そこでオキシトシンと顔の肌状態との関連性を解析した結果,オキシトシンと肌の質感(キメの整い感,色むらのなさ,つや)のスコア値が正相関を示した。そしてハンドプレスによる快感情喚起度合いとオキシトシンとの関連性を解析した結果,両者で正相関が認められた。したがって,ハンドプレスのような快感情を喚起するスキンケア動作の継続で,定常状態(ベースライン)のオキシトシンの上昇を介して,肌の質感が向上する可能性が示された。
著者
征矢 智美 野村 美佳 林 照次 長谷川 敬
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.115-124, 2004-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1 4

「肌の透明感」は女性の肌状態, 肌意識に関するアンケート調査や化粧品使用前後の指標に多く使用される重要なキーワードであるが, 「透明感」が具体的に肌のどのような状態を指すかについては明確ではない。そこで, 本研究では最初に若年層と中高年層を対象に「透明感のある肌」に対する重要度調査と他の肌表現語との関連度調査を行った。その結果, 「透明感のある肌」の重要度は, 若年層では最高位であるのに対し中高年層では肌荒れしていない等の肌悩みの方が重要視されていた。反面, 「透明感のある肌」は, 肌のキメや色, うるおいなどの三つの要素を基本要件とする複合概念であるという点で両年代に差異はなかった。次に, 両年代の評定者が同じ若年モデルを観察したときの「透明感」の主観判断とモデルの実際の皮膚生理的特性との関係を調べた。その結果, 若年層では肌色におけるbの色ムラ (標準偏差), 角層水分量, 皮膚表面形態 (皮溝深さ, 皮溝量), 中高年層では, 肌色におけるLおよびaの色ムラ (標準偏差) について有意な関係が認められた。これらの結果から, 「透明感」の言語的構造に年代差はないが, 判断の手がかりである皮膚の生理特性は異なると考えられた。