著者
櫻橋 淳 神武 直彦 石谷 伊左奈 三鍋 洋司 西山 浩平 石寺 敏 後藤 浩幸
出版者
情報処理学会
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.189-195, 2014-07-15

2011年,東日本大震災およびそれに伴って大規模に進められた計画停電を経て,東京電力管内では電力供給の低下により広く節電を行うことが求められた.電力総需要の約30%を占める家庭部門は,業務部門および産業部門と比較し,電力需要の抑制の呼びかけにどのくらいの電力利用者が対応し,節電を行うのかが未知数であるという課題があった.それに対し,筆者らは,スマートフォンなどの情報端末を通じて参加者の節電の取り組み情報を収集し,収集した情報を分析し,各電力管内での電力使用率などの情報とともにスマートフォンやWebサイトで可視化するシステムを構築した.そして,そのシステムを用いて,ソーシャル・キャピタルと節電行動の関係を実際の節電履歴データを取得して分析すること,およびソーシャル・キャピタルが強くない中でも節電を行う仕組みの実現に寄与することを目的とした実証実験「停電回避プロジェクト」を夏の電力需要が増加する2011年7月1日から100 日間実施した.結果として,①身近なコミュニティにおける節電行動の可視化,②身近なコミュニティでのランキング表示など自身のポジションの可視化,③他の利用者との接続が常時されているというリアルタイム性,の3つを実現し,ソーシャル・キャピタルの度合いが高くない電力利用者に対しても節電行動を促せることが分かった.
著者
伊藤 睦泰 佐藤 恵美子 後藤 浩幸 服部 義一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.254-262, 1990
被引用文献数
2

異なる刈取頻度(年4回刈=4C,および5回刈=5C)と施肥水準(N,P,K成分で各48g/m^2/年=HN,および24g/m^2/年=LN)を組合せた栽培条件下のリードカナリーグラス模擬群落で,1番草および各再生草の生育過程における既存分げつの草丈,葉齢,枯死葉位の推移,ならびに節位別の葉身,葉鞘,節間長を計測した。(1)1番草,再生草ともに生育前半の出葉は急速で,第8葉展開頃までは,刈取頻度,施肥水準にかかわりなく,おおむね6,7日/葉の周期で直線的に葉数を増した。葉身の枯死は,1番草では5月初旬,再生草では刈取後20日頃に始まり,順次上位葉に向かって進んだが,出葉に比べてその進行は緩慢であった。(2)1番草の生育後半には草丈の伸長は特に顕著であり,逆に秋には抑制されたが,全般的に季節による草丈伸長の差異は比較的小さかった。草丈の伸長の経過は,いずれの処理,生育時期においても二つの急伸長期からなる類似の軌跡を描き,初期の急速な生長の後,30cm前後でやや伸長が鈍り,その後再び第2の急伸長期に転じて,例えばHN,4C区の1番草では約80cm,再生草では50cm前後で鈍化した。(3)着生節位別の葉身長は刈取回次による差異は小さく,いずれも第6,7葉までは上位ほど葉身が増し,それより上位節では再び短くなった。1番草では下位節間はほとんど伸長せず,上位の4節間が著しく伸長していた。再生草においても,生育初期の2,3節間は短いものの,それより上位の節間は順次伸長した。各葉齢期に対応する草丈からそのときの最上位の展開葉長を減じて節間の伸長経過を推定したところ,1番草および再生草の第2の草丈急伸長期にあたる5月初旬および刈取後25日前後に急伸長が始まるとみられた。(4)以上のことから,リードカナリーグラス群落を構成する個々の既存分げつは,その生育過程で一定量の同化器官(葉面積)を獲得すると,急激に非同化器官優先の生長へと転換する習性を有しており,その後に起こる節間部の急伸長(=C/F比,群落の草丈の増大)を介して高い乾物生産を可能にしていると考えられる。