著者
後藤 美映
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、ダンテの『神曲』を受容するという形でロマン派第二世代の詩人たちによって表明された政治的美学的改革とコスモポリタニズムの精神性とを明らかにした。具体的には、『神曲』は、ロマン派詩人の叙事詩創作に大きな影響をもたらし、当時の叙事詩に要請された伝統的な様式を超える、革新的、近代的なスタイルの範となったことを呈示した。また、ダンテ受容と軌を一にして、ロマン派の詩人たちが唱えた新しい「ヨーロッパ」文学とは、『神曲』に内在する普遍性と個との有機的調和によって生み出される、コスモポリタン的知の循環と革新性であったことを明らかにした。