著者
奥田 優 梅田 昭子 松本 安喜 桃井 康行 亘 敏広 後飯塚 僚 O'Brien Stephen J. 辻本 元 長谷川 篤彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.801-805, 1993-10-15

癌抑制遺伝子p53はヒトやマウスの様々な腫瘍において不活化されていることが知られている. ネコの腫瘍におけるp53遺伝子の役割を研究するため, 種間で保存されている領域のプライマーを用いPCR法によってネコp53遺伝子cDNAのクローニングを行った. その結果, ヒトの腫瘍における変異の多発発部を含みp53遺伝子の翻訳領域の約90%に相当する1,007bpの塩基配列を決定することができた. ネコp53遺伝子はヒ卜およびマウスのp53遺伝子と同様の構造からなっており, アミノ酸レベルでそれぞれ82.9%および75.6%のホモロジーを示した. さらに, ネコ×マウスおよびネコ×ハムスターの雑種細胞においてネコp53遺伝子特異的プライマーを用いたPCR法を行ったところ, p53遺伝子はネコのE1染色体に存在することがわかった. これらの結果は, ネコの腫瘍におけるp53遺伝子の役割を明らかにするためにきわめて有用と思われる.