著者
徐 賢燮 徐 賢燮
出版者
長崎県立大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:18838111)
巻号頁・発行日
no.13, pp.241-253, 2012

長く日本の植民地とされた韓国は,独立後は映画・音楽・漫画等いわゆる日本大衆文化を規制してきた。やがて反日から克日へ政府の姿勢の転換,日韓国交正常化による経済関係の進展,実際には国内に流通して人気の日本の漫画や音楽等,日本大衆文化解禁の気運は次第に高まったが,開放が実現したのは1998年金大中政権においてである。以来2004年の第4次開放まで段階的に実施された。日本大衆文化の開放が実現した背景には,東西冷戦構造の解体や民主化の確立という国際的社会的要因やそれによって日韓が自由民主や市場経済等の価値観を共有するに至ったこと,ワールドカップ共催で両国の心理的距離が接近したことやネットを駆使するN世代の台頭による日本大衆文化規制の形骸化等が挙げられる。日本大衆文化が部分的とはいえ開放されたことで日韓の文化の相互流入が増え,後の日本の「韓流」ブームにつながった。この意味で金大中は「韓流」の生みの親とも言える。