著者
羽場 利博 得田 与夫 一柳 健次 木谷 栄一 森田 信人 山崎 信 中沼 安二 藤原 隆一 浜田 明 木藤 知佳志 山本 誠 藤田 博明 竹下 治生 山崎 義亀與 泉 彪之助
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.615-623, 1982

症例は50歳女性で空腹時の口唇・舌のシビレ感と放心状態を主訴として来院した.空腹時血糖 (FBS) は30~59mg/d<I>l</I>, 血中インスリン値 (IRI) は7~16μU/m<I>l</I>で, Turnerらの"amended"インスリン・血糖比 {IRI/(FBS-30) ×100} が30~ ∞ と高く, 絶食試験陽性より, インスリノーマを疑ったが, インスリン分泌刺激試験は陰性で, 膵血管造影や逆行性膵管造影も異常所見を認めなかった.<BR>腹部CTスキャンにて膵尾部背側にやや突出した径1cmの腫瘍が疑われたが, この所見のみでははっきり確診できなかった.<BR>経皮経肝門脈カテーテル法により門脈および脾静脈各所のIRIを測定したところ, 腹部CTスキャンの腫瘍部位にほぼ一致して脾静脈の途中に58μU/m<I>l</I>と他の部位に比して明らかな上昇を認め, 開腹術にて膵尾部背側に4mm突出した径1cmの良性腺腫と思われるインスリノーマを発見した.<BR>現在までの本邦における経皮経肝門脈カテーテル法についての症例報告を小括して若干の考察を加え, その有用性を強調するとともに今後CTスキャンも有力な検査法になり得ると考えた.