著者
福井 淳一 井上 健太郎 向出 裕美 尾崎 岳 道浦 拓 徳原 克治 岩本 慈能 坂井田 紀子 植村 芳子 權 雅憲
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.223-229, 2014-04-01 (Released:2014-04-12)
参考文献数
10

症例は65歳の女性で,下血を主訴に前医受診し高度貧血を認めた.上部・下部内視鏡にても原因不明の消化管出血に対し,造影CTを施行し小腸に強い造影効果を伴う腫瘤を認めた.当院にて小腸カプセル内視鏡およびダブルバルーン小腸内視鏡を施行し,下部空腸に20 mm大のびらん・delleを伴う粘膜下腫瘍様の腫瘤を認めた.消化管出血を伴う空腸gastrointestinal stromal tumorと診断し腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査所見および免疫組織化学検査所見では中間悪性型の小腸glomus腫瘍であった.消化管原発glomus腫瘍は比較的まれで,そのほとんどが胃原発である.小腸glomus腫瘍は本邦では報告がなく英文報告でも2例しか報告されていない,極めてまれな疾患である.
著者
徳原 克治 山中 英治 伊東 大輔 小柴 孝友 佐藤 正人 小切 匡史
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.1690-1694, 2001-11-01
被引用文献数
15

患者は69歳の男性.1995年頃より, 肛門周囲の皮膚からの排膿, 出血を繰り返し, 1999年3月頃には大豆大の腫瘤が出現した.2000年初めより排膿, 出血が頻回となり腫瘤が増大してきたため, 同年5月当科を受診した.肛門3〜5時方向にかけて表面に潰瘍を有する38×27mm大の腫瘤が存在, その一部を生検したところ中分化腺癌と判明した.また大腸内視鏡で, 肛門縁より20cm口側のS状結腸に2'型進行癌を認め, 生検の結果は中分化腺癌であった.両病巣の組織像が一致したことより, S状結腸癌とその管腔内転移による転移性痔瘻癌と考え, 腹仙骨式直腸切断術を施行した.痔瘻は日常診療においてしばしば遭遇する疾患であるが, 痔瘻に癌が発生した場合は転移性痔瘻癌も念頭に置き大腸検査を施行する必要がある.また大腸癌患者で痔瘻を有する場合は, 痔瘻への転移も考慮にいれた厳重な経過観察が必要であると考えられた.