著者
徳宿 克夫 久世 正弘
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.803-810, 1994-10-05
参考文献数
17

1992年5月31日,衝突型加速器HERAで,電子陽子(ep)散乱が初めて観測された.10年近くの長い建設期間を経て,ZEUS実験がスタートした.それから2年,初期のデータ解析がなされ,新しい領域での概括的探査ができた.陽子の構造は非常に古くから研究されているが,クォークの描像が確立した現在でも,その振舞に関してわかっていないことが多い.また,光子という最も基本的なゲージ粒子も高エネルギーではハドロンの成分を持つことが知られ,HERAの実験で構造を探ることができる.ここで,これまでの成果をまとめ,今後の展望を紹介する.
著者
山田 作衛 徳宿 克夫 石井 孝信 浜津 良輔 二宮 正夫 奥野 英城 今西 章
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

電子・陽子衝突装置による素粒子実験は、いわばレプトン・クォーク衝突実験であり、レプトンやクォークの内部構造、近距離における両者の相互作用を探る上で新しい情報をもたらす。従来試みられた例はなくHERAが最初の装置であり、加速器技術とともに、実験遂行上も測定器とデータ取得用エレクトロニクスに新しい課題がある。例えば、荷電流弱反応に際して終状態では電子がニュートリノになるため、現象再構成のために高精度のハドロンカロリーメーターが必要になる。また、ビーム電流を大きくするために、パンチ数が多く、間隔が96ナノ秒しかない。このためトリガーやデータ取得に並列処理の手法が取られた。本研究は電子・陽子衝突の研究を進めるためZEUS測定器の設計に伴う開発研究、量産試験と建設を主目的とした。具体的研究テーマは次のとおりである。1)ハドロンカロリーメーター用シンチレーター材料の対放射線試験2)吸収材によるe/h比のコンペンセーションの検討3)直流変換タイプの高電圧電源の開発による省エネルギー化4)新しい磁場遮蔽用材の試験と量産5)多数の光電子増倍管の性能試験と較正6)半導体検出器による電子識別系開発と製作7)並列処理型初段トリガー回路の開発と製作、同ソフトウェアの開発以上の研究に基づき建設された測定器は予定通り完成した。HERAがビーム衝突を開始して以来正常に稼動し、予想された性能を示している順次物理結果が得られている。