著者
徳本 静代 武井 直已 瀬川 和幸 毛利 久夫 古前 敏明
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.381-388, 1985

1976~1983年の間, 広島県の一看護i学校に在籍した女子学生941名 (延1,939名, 18~24歳) を対象に各年1回HBV関連抗原・抗体を追跡調査し, HBV感受性者の動向と健康者集団でのHBV水平感染の実態を血清学的に検討した.<BR>延対象のHBs抗原陽性率 (RPHA法, EIA法) は1.7%, HBs抗体陽性率 (PHA法) は14.7%で, これらを3力年移動平均でみると前者が1.4~2.1%の間でほぼ横ばいの, 後者が18.7~10.4%で年々1~ 2%の減少の傾向を示した.学科別では第2臨床看護i学科 (夜間部, 昼間は医療業務に従事) のHBs抗体陽性率19.1%は臨床看護学科の11.0%に比較して有意に高率 (x2test, p<0.01) であった.<BR>1学年時のHBs抗体陽性率は調査前半 (1976~1979年) が16.3%, 後半 (1980~1983年) が9.3%で, 入学前のHBV感染状況は減少の傾向を示した.学科別では第2臨床看護学科が有意な低下 (X<SUP>2</SUP>test, p<0.05) を示していた.<BR>一方, HBe抗原陽性carrierは6名認められた.しかしながら対象内のHBV水平感染については, 調査期間中に3例 (0.4%, 1: 265) の新感染例を確認したがそらが対象集団内における水平感染であるとする証拠は血清学的な追跡からも, 在籍調査からも得られなかった.<BR>なお, 200倍希釈血清におけるHBc抗体価 (EIA法) はcarrierではIH%90%以上であり, 感染初期ではIH%30%以下であった.
著者
徳本 静代 武井 直己 瀬川 和幸
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.193-199, 1982-03-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
12

1979~1980年のインフルエンザは複数の型のウイルスによる流行であったが広島県でもA (HIN1) 型とA (H3N2) 型の両ウイルスが分離された.発症者 (41名) ペア血清と非発症者 (234名) 血清を供試して, HI反応によりA (HIN1) 型の流行とA (H3N2) 型の流行の疫学的検討をするとともに, ゲルク揖マトグラフィ (SephacrylS-300Super負ne) により分画された (各分画についてmicro ouchterlony法でウサギ抗ヒト血清を用い, IgM, IgG, IgAおよびα2マクログロブリンの同定を行いインヒビターの含まれるα, マクログロブリンを除去した) 発症者ペア血清のIgMおよびIgG (lgAを含む) 分画におけるこれら両型のウイルス抗原に対するHI抗体価の変化を明らかにすることで流行に関与した両ウイルスの動態を具体的に把握しようとした.発症者ペア血清のHI抗体価の有意な上昇からA (HlN1) 型とA (H3N2) 型の流行を確認したが, IgG (lgAを含む) 分画におけるHI抗体応答が著しく上昇してこれを裏付けた.感染ウィルスが確認された発症者集団の回復期血清のHI抗体価のG, M. (A/USSR/92177 (HlN1);1: 547, A/山梨12/77 (H3N2);1: 427) とHI抗体価の逆r字型分布パターンを感染の指標とした場合, 非発症者血清においてもA (HlN1) についてはその感染指標に近いものが認められたが, A (H3N2) 型についてはそれが認められず, A (HIN1) 型が流行の主流であったものと推察された.IgM抗体のもつ臨床的意義から感染ウイルスの抗原刺激の時期を把握しようとしたが, IgM分画で認められたHI抗体応答からは直接的には明らかにされなかった.したがってA (HIN1) 型とA (H3N2) 型の同時流行については明らかにすることができなかった。