著者
徳永 正二郎 FRIEDEN Jeff 池間 誠 ANDERSON Kym NOORDIN Sopi EATON Jonath WONG John 大野 健一 中本 悟 PAULEY Louis 中尾 茂夫 DEKLE Robert 高坂 章 UNGER Daniel 花崎 正晴 FRANKEL Jeff ARIFF Mohame PAULY Louis LINCOLN Edwa KIM Chang So 楊 秀吉 桜井 真
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

本研究では、(1)日本、アジアNIEs、ASEAN、中国へと連鎖したアジア経済のダイナミックな発展とそれに平行して現実性を持ちはじめた太平洋両岸の地域経済圈形成(「北米自由貿易協定」を軸としたアメリカ大陸自由貿易圈形成並びに「東アジア経済協議体(East Asia Economic Caucus)」にみられるアジア経済圏形成)の動きがみられるが、それら両者はどのような相関性および相互作用を持っているか、(2)アジア地域経済において日本・アジアNIEs、ASEAN、中国を中心に相互依存の関係が深化拡大しているが、そのプロセスでアジア諸国、日本、米国において経済・通商政策に変化がみられるかどうか、また発展の程度や立場を異にする諸国経済の経済・通商・投資・金融政策相互の間にいかなる軋轢や収歛(convergence)がみられるか、(3)アジア及び北米における地域主義の台頭が日米の政治・経済関係にどのような影響を及ぼし、日米関係がいかなる方向に変容しつつあるか、という設問の上で、調査研究を進めてきた。この作業は、アジア経済の成長と日米関係の変容という二つの(複眼的)分析視角のもとで、ポスト冷戦期の世界経済秩序を展望することを意図している。初年度(1993年度)には、アジアと北米の地域主義に焦点を当て、その問題を軸に(1)地域経済の発展とアジア太平洋地域経済秩序、(2)アジア太平洋経済における日本と米国、(3)アジア太平洋地域経済の発展-課題と展望という3つのセッションに分かれて調査研究した(九州大学にてワークショップを開催し、Asian Economic Dynamism and New Asia-Pacific Economic Orderとして刊行)。次年度(1994年度)には、東南アジアにおける実態調査を行い、ポスト冷戦期という政治的経済的世界システムの再編過程で発生している通商・金融・援助等多岐にわたる日米間の経済的摩擦がアジアの成長とどのように関係しているか、またアジアにおける地域主義の実態について分析した(タイ王国チュラロンコン大学経済学部及び国際経済研究所の協力で、本プロジェクトの共同研究者とチュラロンコン大学、タマサート大学その他研究機関の研究者とが一堂に会してワークショップを開催した)。本年度(1995年度)の研究テーマは、初年度と次年度の研究成果を踏まえて、「アジアにおける経済成長、社会経済的変容及び地域主義」を日米双方の立場から調査研究した。この調査には、アジア金融市場及びアジア域内資金フローの研究に業績をあげている奥田英信(一橋大学講師)、ベトナムやラオスなどインドシナ半島の社会経済問題のエキスパートであるモンテス(Manuel F.Montes;ハワイ東西センター研究員)、日本研究のエキスパートであるモリソン(Charles Morrison;ハワイ東西センター)、韓国の対外経済研究の第一人者であるリ-(Lee H.Chun;ハワイ大学韓国研究所所長)及び米国における日本研究の先導者モチヅキ(Michael M.Mochizuki;ブルッキングズ研究所主任研究員)を研究協力者として招き、ハワイ東西センターでワークショップを開催した。これは、角度を変えてみれば、アジア地域の社会経済的発展を日米関係を通して調査研究することであり、アジア太平洋の新しい経済秩序を構成する二つのファクター(すなわち、「アジアの成長・社会経済の変容・地域主義」という古いシステムを破壊するファクターと「日米基軸」という伝統的ファクター)の相関性と相互作用について認識を深めることにつながった。1994年度及び1995年度の研究成果は、初年度同様公刊の予定である。
著者
徳永 正二郎
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

現代の貿易金融は、貿易金融の現地金融化、貸付金融と出資金融の複合化(ハイブリッド化)、貿易債権保全手法の資本取引化など、革命的ともいえる変化を遂げてきている。この変化の意味と原因について分析するために、本研究では、まず第一に、貿易取引と金融・決済のシステムがどのように発展してきたか歴史的に検討した。特に、産業革命(機械制大工業による大量生産システム)が確立した後の19世紀中葉に、英国を中心に生成発展したCIF売買(船荷証券や保険証券の準流通証券化なども含む)と荷為替信用システムについて分析し、このような新しい商契約と貿易金融システムの誕生が機械生産が生みだした世界的産業構造の再編成と深く関係していることを確認した。またその中で、新しい貿易金融方式に則した国内金融システムならびに国際決済制度が創り上げられていったことを解明した。この歴史的分析のもとで、つぎに現在急激に変化している貿易取引と金融システムの特徴について分析した。そこでは、現地法人による貿易と金融の手法、コンテナ貿易の進展と統一信用状規則の改訂問題、複合金融の実態(カウンタートレード、国際リース、プロジェクトファイナンス、開発輸入、シンジケートローンの債権化など)、さらには通貨スワップ・ベッジ債の発行など資本取引と融合した新しい貿易債権リスク・ヘシジ手法について、専門家の協力を仰ぎながら、分析した。現代貿易取引と金融の特質を体系的に明らかにするなかで、戦後期の先進国相互、先進国と途上国(とりわけOPECとNICS)との間の相互依存関係の深化と発展が、貿易金融イノベーションの背後にあることを確認できた。以上の成果は、他の三名の専門研究者との共同研究として『貿易金融イノベーション-変貌する貿易取引と金融』(有斐閣、5月刊行予定)にまとめて発表される。