著者
徳田 宝成 岩下 明生 小川 博 安藤 元一
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
巻号頁・発行日
pp.191, 2013 (Released:2014-02-14)

アライグマが高密度に生息している神奈川県鎌倉市において,緑地と市街地が混在した環境における夏季の胃内容物を調べ,他地域における先行研究と比較した.供試材料は鎌倉市において 6~ 8月に被害報告を受けて捕獲駆除された 39個体のアライグマである.取り出した胃は冷凍保存し,解凍後0.5mmメッシュの篩で水洗し内容物をハンドソーティングで分類した.供試した 39個体中 24個体に内容物を確認でき,目レベルの分類では 24項目を確認できた(グルーミング等による毛等,同時採食と考えられる地衣類,イネ科,その他植物,石は評価から除外した).出現頻度は,動物質において甲虫目 (58% )が最も高く,次いでヨトウムシ等のチョウ目(38%),アメリカザリガニ等の甲殻類 (29% )となった.植物質においてクワ等の果実類 (38% )が最も高く,次いでクルミ目 (4% )となった.人由来の食物をみるとピーマン等の農作物 (4%),パンの残飯 (4%)の出現はわずかであった.しかし,プラスチックの破片や袋等の人工的な無機物 (54% )は高率で出現した.同定不能の内容物も 67%存在した.これらのことから夏季における鎌倉市のような環境では,緑地を主要な採餌場とし動物質を多く利用しており,市街地の利用は相対的に少ないことが知られた.本研究と他地域の比較を行うために各地域における多様度指数 H’を比較したところ,鎌倉市が 3.5であるのに対し,いすみ市では2.9,原産地の米国では 1.7~ 2.6となり,鎌倉市の方が高い傾向が見られた.また Piankaの重複度指数 αを用いて各地域間の重複度を算出したところ,本研究‐各地域間においてはいすみ市が 0.62で最も高く,原産地の米国では 0.45~ 0.57となり,本研究と各地域における重複度は低かった.