著者
志和 睦 武智 多与理 畠中 芳郎 高村 仁知
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.141, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】コールドプレスジュースはスロージューサーで作成したジュースで、摩擦や熱で失われやすい酵素やビタミンなどが残っているほか、固形物が取り除かれているので胃への負担が少ないなどの理由で人気が高まっている。家庭用ジューサーの普及に伴い、コールドプレスジュースを家庭で製造する機会が増えたが、残渣などの廃棄部分が多く出るという問題がある。しかし、残渣には様々な機能性成分が含まれているため、食品としての利用価値が高い。本研究では、コールドプレスジュース製造残渣を増粘多糖類として利用したグルテンフリー米粉パンの開発を試みた。 【方法】柑橘系の果物からコールドプレスジュースを製造して得られたジュース残渣を試料とし、増粘多糖類として、グルテンフリー米粉パン製造の際に添加した。未乾燥のジュース残渣はパン生地の水分量に影響するため、まず、添加時の形状と添加可能な上限量を検討した。その後、ジュース残渣を添加した食パンを調製し、物性値(生地の膨化度、生地の粘度、比容積、パン断面の観察など)の測定および官能評価を行い、最適添加量を検討した。 【結果】ペクチンなどの食物繊維が豊富なジュース残渣の添加量を増やすには乾燥状態とすることが望ましいため、家庭で可能な乾燥法を検討し、自然乾燥と電子レンジ加熱を組み合わせて乾燥・粉末化する方法を見出した。米粉比約2%までの添加で、パン生地の粘度上昇と膨化が確認できた。焼成後のパンの品質も、対照として用いたグルテンを添加した米粉パンに近いものが調製でき、ジュース残渣が増粘多糖類として利用できることが示唆された。また、ジュース残渣の添加により、果物風味のおいしいパンが作成できた。