著者
武智 多与理 原田 和樹
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成23年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.58, 2011 (Released:2011-08-30)

セリシンタンパク質の抗酸化性についての考察○武智多与理1)、原田和樹2)1)平安女学院大学 2)水大校【目的】蚕の繭を構成するセリシンは、絹糸タンパク質であるフィブロインを接着するタンパク質であり、繭に20~30%含まれている。近年になりセリシンの物理・化学特性(粘性,乳化性,抗酸化性,チロシナーゼ阻害活性等)が報告され、化粧品や医薬品分野での利用が提案されている。私たちは、セリシンの様々な化学的特性の中の抗酸化性に着目し、具体的な抗酸化活性値を明らかにすることを試みた。本研究では4種類の方法を用いてセリシンのラジカル捕捉活性を測定し、その抗酸化性について検討した。【方法】セリシン試料は、異なる繭から調整したセリシン粉末2種類(緑繭、白繭由来)を使用した。緑繭はあざやかな黄色の繭で、セリシン粉末にケルセチンなどのフラボノール色素を含んでいる。抗酸化測定試料は、セリシン粉末に水を加えて磨砕し、遠心分離(15,000×g、4℃、15分)後、上清をろ過して調整した。調整した抗酸化測定試料について、DPPH法、化学発光法、ORAC法、及びESR法の4法でラジカル捕捉活性を測定した。【結果】4法での測定により、数種類のラジカル捕捉活性を知ることができる。いずれの方法でも、2種のセリシンタンパク質は高い活性を示した。DPPH法では緑繭セリシンが白繭セリシンの約1.3倍、ORAC法では約2倍の抗酸化能を示した。化学発光法では緑繭セリシンと白繭セリシンの抗酸化能はほぼ同程度であった。一方、ESR法では白繭セリシンが緑繭セリシンよりはるかに高い抗酸化能を示した。これらの結果から、セリシンタンパク質が高い抗酸化性を持つことが明らかになった。これまで言われてきたセリシンタンパク質の抗酸化性について、具体的な抗酸化能の測定値により裏付けることができた。
著者
志和 睦 武智 多与理 畠中 芳郎 高村 仁知
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.141, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】コールドプレスジュースはスロージューサーで作成したジュースで、摩擦や熱で失われやすい酵素やビタミンなどが残っているほか、固形物が取り除かれているので胃への負担が少ないなどの理由で人気が高まっている。家庭用ジューサーの普及に伴い、コールドプレスジュースを家庭で製造する機会が増えたが、残渣などの廃棄部分が多く出るという問題がある。しかし、残渣には様々な機能性成分が含まれているため、食品としての利用価値が高い。本研究では、コールドプレスジュース製造残渣を増粘多糖類として利用したグルテンフリー米粉パンの開発を試みた。 【方法】柑橘系の果物からコールドプレスジュースを製造して得られたジュース残渣を試料とし、増粘多糖類として、グルテンフリー米粉パン製造の際に添加した。未乾燥のジュース残渣はパン生地の水分量に影響するため、まず、添加時の形状と添加可能な上限量を検討した。その後、ジュース残渣を添加した食パンを調製し、物性値(生地の膨化度、生地の粘度、比容積、パン断面の観察など)の測定および官能評価を行い、最適添加量を検討した。 【結果】ペクチンなどの食物繊維が豊富なジュース残渣の添加量を増やすには乾燥状態とすることが望ましいため、家庭で可能な乾燥法を検討し、自然乾燥と電子レンジ加熱を組み合わせて乾燥・粉末化する方法を見出した。米粉比約2%までの添加で、パン生地の粘度上昇と膨化が確認できた。焼成後のパンの品質も、対照として用いたグルテンを添加した米粉パンに近いものが調製でき、ジュース残渣が増粘多糖類として利用できることが示唆された。また、ジュース残渣の添加により、果物風味のおいしいパンが作成できた。
著者
原 知子 安藤 真美 伊藤 知子 井上 吉世 大塚 憲一 大野 佳美 岡村 由美 白砂 尋士 高村 仁知 武智 多与理 露口 小百合 中原 満子 中平 真由巳 西池 珠子 林 淑美 深見 良子 藤村 浩嗣 松井 正枝 的場 輝佳 水野 千恵 村上 恵 山下 貴稔 湯川 夏子 渡辺 健市
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.23-27, 2004-01-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1

酸価1∼4.5の段階的に劣化度が異なる劣化油1,2,3を用いて,揚げ玉,まいたけの天ぷら,コロッケを調製し,揚げ物および揚げ油の官能評価による風味とPCテスターによる極性化合物量の関係について検討した.1.新鮮油,劣化油1,2,3の4種の劣化程度の異なる油及びそれらで調製された製品の風味に有意差が認められた.これら4種の油は酸価,粘度,極性化合物量が段階的に異なるもので,揚げ玉,まいたけの天ぷら,油自体の風味の評価結果は,これらの要素と対応した.新鮮油,劣化油1,2,3の順に風味評価は低下したが,劣化油1から極性化合物量15%の劣化油2の間で低下が顕著であった.また,劣化が進行した油において官能評価ではその違いが認め難くなる傾向にあった.コロッケでは油の劣化による風味評価の低下は小さかった.2.揚げ玉やまいたけの天ぷらでは極性化合物15%程度まで,コロッケでは,25%程度まで風味評価のよい揚げ物を調製できた.3.極性化合物量15%以上で風味評価が低下するとともに風味の劣化度合いを弁別し難くなる傾向があったことから,栄養的にも嗜好的にも,揚げ油の極性化合物量を15%以下で管理するのが適当であると考えられた.