著者
志村 匡代 岩倉 政城 井川 恭子 小関 健由
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.99-105, 2003-12-30

口臭に対する関心が高まりつつある現代社会において, 口臭外来の需要は高まりつつある。口臭と歯科疾患, 全身疾患, 精神疾患の関連が論じられ, 口臭症の国際分類も提唱されている。一方で, 地域住民の口臭の度合や口臭に対する意識の程度は十分に把握されていない。本研究では宮城県一農村地区の成人歯科健診受診者333名を対象に口臭測定器による口臭検査ならびに質問紙調査を行った。口臭検査による口臭の有無, また質問紙調査による口臭意識の有無で対象者を群別し, 歯科健診項目をあわせて関連性を検討した。その結果, 本調査対象者の44.4%が口臭ありと判定され, このうち65.5%が自分の口臭に認識を持たなかった。また91.9%には口臭での受診歴がなく, 潜在的な口臭症の治療対象者と考えられた。一方, 口臭なしと判定された者のうち, 自分の口臭に対する認識を有する13.2%には, 自臭症(仮性口臭症および口臭恐怖症)の可能性が高いと考えられた。この群の81.8%には口臭での受診歴がなく潜在的な口臭症治療対象者の可能性が示唆された。なお口腔内診査の結果から, 舌苔のある者, 口腔清掃状態の悪い者で有意に口臭が認められた。さらに自分の口臭に対する意識のある者では, 有意に年齢が低く, 未処置歯数が多く認められた。