- 著者
-
志水 太郎
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.2133, 2020-11-10
生坂政臣先生門下の鈴木慎吾先生のご本が出たということで,とても楽しみに拝読させていただきました.千葉大学の総合診療科は「診断推論学」を屋号にされることからも,最近では同門の鋪野紀好先生も診断学の探求を中心に同分野の本を出版されるなど,日本の診断学シーンを牽引される総合診療科だと思います.読後,その伝統のエッセンスが本書に満ち満ちていることが実感できました. 本書が画期的であり,また多くの若手にとって希求の書である理由は何でしょうか.それは,外来診療の診断学の原則論に言及した本であることが第一と感じます.鈴木先生は本書を通して何を伝えられたかったのかを考えました.それは,多面において教育リソースの限られた日本の臨床教育現場において,最も難しいセッティングの1つである外来での診療における指導・学びの羅針盤を提示されたかったのではないか,と想像します.外来・救急・病棟という“3大臨床現場”のうち,キャリアの初期であまり立つことができないのが外来です.(おそらく)日本の多くの現場では,2年間の臨床研修を終え,3年目になれば外来の枠を持たされることが多いです.連続性のある病棟のケアとは異なり,リアルタイムでの即応性が求められ,かつ外来と外来の「ドット」同士をつなぐような非連続の時間軸で勝負していかなければならないのが外来におけるケアの難しさです.臨床実習の学生や臨床研修の初期臨床研修医は,制度上外来に立つことが多くなってきた現在,一方ではそこの訓練に必要な指南書は国内にほぼ存在しません.そこに登場したのが本書というわけです.そして,皆が潜在的に期待していた「型」が提示され,しかもそれが症状ごとにアレンジされた型であれば,これに比肩する書籍もそうないのではないかと感じます.