著者
志賀 俊哉
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.72-78, 2016-01-15 (Released:2016-02-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

メタアナリシスは,臨床上の疑問に答える有力な手段としてすでに確立された研究手法であるが,従来の手法では2種類の治療法を直接比較することしかできず,その多くは介入群vs.対照群であった.3種類以上の治療法の結果を統合する方法は,multiple treatment comparisonあるいはネットワーク・メタアナリシスなどと呼ばれ,ベイズ・モデルを用いることで可能となる.この方法は,過去に直接比較試験を実施していない治療法の比較(間接比較indirect comparison)や,どの治療法が最も優れているか(治療法の順位付けrank of probabilities)を可能にする点において,特に強みがある.
著者
輪嶋 善一郎 志賀 俊哉
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.61-65, 2015 (Released:2015-03-07)
参考文献数
14

セロトニン症候群は,セロトニン作動薬の投与中に出現する副作用で,神経系のセロトニン作用の増強によって生じ,時に致死的合併症を伴う症候群である.症状として,発熱,高血圧,頻脈などの自律神経症状,振戦,ミオクローヌス,筋強剛などの神経・筋肉症状,不安,興奮,錯乱などの精神症状を呈する.今回われわれは,帯状疱疹関連痛の患者に対しデュロキセチンを投与開始したところ,セロトニン症候群と思われる症状をきたした症例を経験した.患者は77歳,男性,左C4~C6領域の帯状疱疹関連痛.治療として,プレガバリン,トラマドール/アセトアミノフェン配合錠,アミトリプチリンなどを投与していたが,アミトリプチリンに替えてデュロキセチンを投与開始した翌朝,ミオクローヌス,筋強剛などが生じ,患者は自己判断にて服用を中止した.セロトニン症候群は,頻度は少ないが,ペチジン,ペンタゾジン,トラマドール,デキストロメトルファンなどと抗うつ薬の併用時に発現することもある.また,一部のオピオイドもセロトニン作動性の薬剤であることがわかってきている.神経系におけるセロトニン作用を増強する薬剤を多く用いるペインクリニックの臨床では,注意が必要である.