著者
忽那 史也 上野 未貴 徳田 昌紘 岩永 洋 堤 圭介
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.224-230, 2021 (Released:2022-03-29)
参考文献数
20

一過性脳虚血発作様症状で発症し,家族歴から遺伝的要因が考えられる1例を経験した.症例は26歳男性.8歳時にも類似の病歴がある.突然の構音障害,嚥下障害を発症したが数時間で軽快した.翌日,同様の症状が再発し当科へ入院した.症状は2時間で軽快したが,MRIで両側深部白質にDWI高信号域を認めた.後日画像所見の消失を確認し可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎/脳症(mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion,以下MERSと略記)と診断した.同胞に同様の臨床経過を示すMERSの既往があり,MERS発症機序の一因として遺伝的要因の関与が示唆された.
著者
忽那 史也 山下 魁理 金本 正 黒濱 大和 立石 洋平 辻野 彰
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.671-675, 2021 (Released:2021-10-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1

症例は右片麻痺,失語を主訴に搬送された86歳男性.拡散強調画像で左島皮質から前頭葉に高信号域があり,MRAで左中大脳動脈が閉塞していた.血栓回収療法を行ったが再開通は得られなかった.血液培養検査でEnterococcus faecalisが検出され,大動脈弁に可動性の疣腫を認めたことから感染性心内膜炎と診断した.その後多臓器不全で死亡し,病理解剖を施行した.脳塞栓部には細菌塊を伴う血栓があり,炎症細胞が血管壁内に浸潤し,内弾性板は一部破綻していた.血栓と血管壁は癒着していた.感染性心内膜炎による脳塞栓症では,血栓と血管壁の癒着が血栓回収療法による再開通を得られにくくする要因の一つかもしれない.