著者
餅原 尚子 松田 英里 成願 めぐみ 久木﨑 利香 有留 香織 永田 純子 坂元 真紀 前原 加奈 松元 理恵子 久留 一郎
雑誌
鹿児島純心女子大学大学院人間科学研究科紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.44-54, 2007-03-31

災害の体験によって直接の被災者だけでなく,救援者も大きな影響を受ける。海外での先行研究と同じく,わが国の救援者においても心的外傷性ストレス症状(post‐traumatic stress reaction)の割合が高いことが明らかになっている。救援者は災害現場に出場し,被災者と同じような体験をすることによるストレスを受けることになる。一方,職業的救援者であるがゆえに一般的な被災者とは別のストレス(災害出場を忌避できない。彼らには社会的な期待が大きい)に加え,特有の義務感,責任感や弱音を吐きにくい組織的風土が加わる。まして,箝口令が敷かれているとなおさらである。本研究では,消防職員,海上保安官,警察官,救急救命士が直面するCIS(Critical Incident Stress:惨事ストレス), PTSD(Posttraumatic Stress Disorder:外傷後ストレス障害)の現状について分析し,ストレスの特徴を明らかにすることを目的とした。アンケート調査を実施し,そのうち消防職員356名,海上保安官80名,警察官854名,救急救命士200名の有効回答を得ることができた。CISついては,海上保安官や警察官よりも消防職員や救急救命士に高く認められた。さらに,警察官より消防職員や救急救命士が, PTSDの症状を呈しやすいことが明らかになった。
著者
成願 めぐみ 餅原 尚子 久留 一郎
雑誌
鹿児島純心女子大学大学院人間科学研究科紀要
巻号頁・発行日
vol.4, pp.19-27, 2009-03-31

本研究では心的外傷(トラウマ)のパーソナリティに及ぼす影響が,ロールシャッハ反応にどのように表出するのか, その現れを探索した。 研究対象としてPTSDの事例8ケース, トラウマとの関係が深いとされるBPDの事例11ケース, 統制群として健康群10ケースのロールシャッハ・プロトコルを用い, 名古屋大学式技法によるスコアの量的分析と,反応の質的分析を行なった。結果として,「血液反応」(Bl)の多さ, Positive feeling%の少なさ, 色彩優位の反応の多さ(FC<CF+ C)などが,PTSD, BPD両群に共通した。また,両群ともにPTSD症状の「再体験」を思わせる反応が多くのケースに見いだされ, トラウマの再現性や影響はロールシャッハ反応上にも見いだされることがわかった。