- 著者
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我妻 弘基
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.8, pp.771, 2021 (Released:2021-08-01)
- 参考文献数
- 3
DNAエンコードライブラリー(DNA-encoded library: DEL)を用いたスクリーニングは,有用なドラッグディスカバリーの手法である.DELは,化合物とDNAを結合させ,化合物情報をDNA配列に対応させた数兆規模の化合物ライブラリーである.固定化された標的タンパク質に対して,DELの化合物をアッセイしたのちに洗い流すことで,標的タンパク質と相互作用した化合物を選抜する.これらの化合物からDNAを切り出し,その配列を読み込むことで化学構造を同定する.DNAはPCRで増幅させることができるため,ごく少量の化合物でも評価できるのが大きなメリットである.一方,大規模なDELを構築するためには,水中において,DNAに含まれるアルコールやアミンの存在下,低濃度(1mM)の化合物を用いる条件でも進行する反応を選択する必要がある.そのため,使用できる基質や反応条件が限られており,DELの多様性が増加しにくいという課題を抱えており,この課題を解決するための反応条件の開発が求められている.金属触媒を用いたカップリング反応はDEL構築に有用であるが,sp2炭素のカップリングにとどまっている.Yuらは,多様なDELの構築に有効なsp3炭素のC-H結合活性化反応を報告したので,本編で紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Neri D. et al., Drug Discovery Today, 21, 1828-1834(2016).2) Yu J. -Q. et al.,Chem. Sci., 11, 12282-12288(2020).3) Yu J. -Q. et al., Chem. Rev., 117, 8754-8786(2017).