著者
戸井田 敏彦
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

コンドロイチン硫酸(以下CS)は,グリコサミノグリカンに属する酸性多糖類である。構造的にはGalNAcにGlcAがβ1-3結合した二糖を構成単位とした繰り返し構造をもつ直鎖状多糖鎖で、GalNAcのC4位またはC6位,あるいは,GlcAのC2位に硫酸がエステル結合した化合物である。今回CSの経口的摂取における生体調節機能を明らかにするために,賦与が予想される抗炎症活性および抗アレルギー活性について,腸管免疫系に焦点を絞り,全身性免疫系への影響を分子レベルで定量的に解析した。その結果、以下のことが明らかになった。1.ウシ気管軟骨由来CS(分子量分布8〜22kDa、平均分子量15kDa)のマウス腸管からの吸収は、投与量の0.01%以下であること。2.上記CSを分子量により分画しても各画分のCSの硫酸化度、硫酸化の位置に違いがないこと。3.分子量12kDa以上のCSはほとんど経口吸収されないこと。4.腸管上皮間リンパ球(IEL)膜表面上のL-セレクチンにCSが結合し、サイトカイン産生を介して全身性免疫系を刺激すること。5.腸管吸収されたCS(分子量7〜5kDa)は脾臓細胞のヘルパーT細胞のI型、II型への分化誘導に機能すること。以上経口投与したCSはその分子量により代謝的運命が異なるものの腸管免疫系を介して全身性免疫に対しても作用する可能性が明らかになった。
著者
岩澤 真理 寄藤 和彦 戸井田 敏彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.11, pp.2165-2171, 2009-10-20 (Released:2014-11-28)

コンドロイチン硫酸・鉄コロイド注射液(以下ブルタール®)は鉄欠乏性貧血の治療に使用される鉄コロイド製剤である.我々は成田赤十字病院皮膚科外来にて,平成18年3月から5月にかけて,ブルタール®による薬疹4例を経験した.従来原料として使用していたウシ由来のコンドロイチン硫酸ナトリウムを,平成17年11月サメ由来品に変更後より副作用報告が急増した.平成18年7月よりブルタール®の自主回収が実施され,被害の増加は防がれたが,原因は解明されていない.今回我々は,ブルタール®の材料に使われたコンドロイチン硫酸を分析し,その結果,ウシ由来のコンドロイチン硫酸は4位に硫酸基が結合したN-アセチルガラクトサミン(CSA)が主たる成分であり,サメ由来のコンドロイチン硫酸は6位の硫酸基が結合したN-アセチルガラクトサミン(CSC)が主たる成分であった.ヒトのコンドロイチン硫酸はCSAが主成分であることが知られており,硫酸化度,分子量などの構造の変化により薬疹を生じた可能性を推測した.
著者
黄 永 豊田 英尚 輿石 一郎 戸井田 敏彦 今成 登志男
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.2182-2186, 1995-12-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
28
被引用文献数
5 7

Depolymerized holothurian glycosaminoglycan (DHG) produced artificially from sea cucumber has an anticoagulant and antithrombotic activity. In the present study, we attempted to determine the plasma level of DHG using a chemical procedure. A general method for determination of chondroitin sulfates by forming unsaturated disaccharides with chondroitinase digestion was difficult to apply to DHG, because it was resistant to any chondroitinase digestion. We therefore developed a highly sensitive postcolumn HPLC method for determination of intact DHG. DHG was applied to Asahipak NH2P-50, an amino-bonded column, eluted by alkaline solution and then detected with arginine under a strong alkaline condition as a postcolumn reagent. The limit of detection for DHG was 10ng. The present method was applicable to the determination of DHG in plasma after intravenous administration.
著者
岩澤 真理 寄藤 和彦 戸井田 敏彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.11, pp.2165-2171, 2009

コンドロイチン硫酸・鉄コロイド注射液(以下ブルタール<sup>®</sup>)は鉄欠乏性貧血の治療に使用される鉄コロイド製剤である.我々は成田赤十字病院皮膚科外来にて,平成18年3月から5月にかけて,ブルタール<sup>®</sup>による薬疹4例を経験した.従来原料として使用していたウシ由来のコンドロイチン硫酸ナトリウムを,平成17年11月サメ由来品に変更後より副作用報告が急増した.平成18年7月よりブルタール<sup>®</sup>の自主回収が実施され,被害の増加は防がれたが,原因は解明されていない.今回我々は,ブルタール<sup>®</sup>の材料に使われたコンドロイチン硫酸を分析し,その結果,ウシ由来のコンドロイチン硫酸は4位に硫酸基が結合したN-アセチルガラクトサミン(CSA)が主たる成分であり,サメ由来のコンドロイチン硫酸は6位の硫酸基が結合したN-アセチルガラクトサミン(CSC)が主たる成分であった.ヒトのコンドロイチン硫酸はCSAが主成分であることが知られており,硫酸化度,分子量などの構造の変化により薬疹を生じた可能性を推測した.