著者
戸所 泰子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.481-494, 2006-08-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
21
被引用文献数
3 1 1

本稿は,都市における空間利用と,人々が都市景観を認識する際に重要な視覚情報となる建築物の外観に使用される色彩に着目し,その両者の関係性について,京都市都心部を事例に分析したものである.その結果,幹線道路には,大規模・中高層建築物に収容される商業・業務関連機能が,細街路には,京都の伝統的建築物である京町家を中心に居住関連機能が各街路に沿って卓越すること,都市景観の識別に大きく影響する色彩には「地域の色」と「企業の色」があることなどがわかった.幹線道路沿道には,地域性よりも全国一律の企業アイデンティティを重視した「企業の色」が,細街路沿道には,その地域の自然・文化を反映し,地理的・歴史的に形成されてきた「地域の色」が現れる.「地域の色」は主として建築物の外観に用いられ,都心景観全体のベースを成すが,近代化に伴う機能的地域分化・都市更新の過程で「企業の色」が「地域の色」を凌駕し,地域性を喪失させている.