著者
村田 陽平
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.75, no.13, pp.813-830, 2002-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
45
被引用文献数
2 3

本稿の目的は,従来の地理学ではほとんど検討されてこなかったセクシュアリティの視点に注目して,公共空間における男性という性別の意味を解明することである.日本のセクシュアルマイノリティの言説資料を基に,「外見の性」という性別に関わる概念を分析軸として検討する.まず「外見の性」が現代の公共空間といかに関連しているのかを考察する.次に,男性の「外見の性」に意味付けられる女性への抑圧性を検討し,その意味付けを行っている主体は,女性のみならず男性でもあることを示す.そして,公共空間における男性という性別は,「外見の性」が男性である状態を意味することを明らかにする.この知見は,日本における「女性専用空間」の意味を考える上で有意なものである.
著者
山本 健太
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.442-458, 2007-06-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17
被引用文献数
6 3 3

東京におけるアニメーション産業の集積メカニズムを企業間取引と労働市場の実態分析により検討した. その結果, 企業間取引の特徴として, 業界内の受外注は短納期であり, 契約内容が明文化されないことが明らかになった. アニメーション制作企業は取引先企業の技術力と支払いに対する信頼を通して取引の柔軟性を得ている. そのため, 企業相互の関係構築が重要になっている. 一方, 労働市場の主な特徴はフリーランサーが業界の主要な労働力になっていることである. フリーランサーは不安定な就業状態におかれているが, 仕事を通じた縦の人的つながりによって技術を修得し, 仕事仲間の横のつながりによって仕事を得ている. したがって, アニメーション産業の東京集積は, (1) 相互間の知識と信頼に立脚した取引が可能となる同業他社との近接性, (2) 柔軟性に富んだ専門的な労働者の確保と再生産が可能な労働市場, (3) スポンサーとなる関連コンテンツ産業の集積, (4) 新規労働者を供給する専門学校などの相互連関により維持されていると理解できる.
著者
阿部 康久 高木 彰彦
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.228-242, 2005-04-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

衆議院への新選挙制度の導入によって,個人後援会に代表される国会議員の政治組織が,空間的にどのような変容を遂げつつあるのかを長崎県を事例として検討した.並立制導入以降も,議員の多くは,新選挙区から外れた地区においても政治活動を行い,中選挙区時代の後援会組織を,基本的には維持している.その要因として,選挙区外の支持者であっても,選挙の際には支援を受けられるという点があるが,中選挙区時代の区割りが,現在でも議員や後援者の意識に,強い影響力を有しているという側面も指摘できる.これに対して,現在の選挙区が,交通アクセスが悪い諸地域から成り立っているところでは,中選挙区時代の後援会組織を維持することに消極的である.また,衆院から参院議員や知事に鞍替えした議員は,広大な選挙区をカバーする後援会組織を作ることが難しく,その空間的範囲は,衆院時代のものに限定されている.党派別に見ると,与党系の議員は,自前の後援会組織だけでなく,党所属の地方議員や支持団体からも支援を受けられるのに対して,保守系野党議員は,このような支援を受けにくく,従来の後援会組織に集票活動を依存する傾向が強くなっている.
著者
河本 大地
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.373-397, 2006-06-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
67
被引用文献数
1 1 1

グローバルなフードシステム化が進む現状を踏まえ,途上国における有機農業の展開とそのメカニズムを,スリランカを対象に研究した.その際,特に関連アクターの行動と相互関係に着目して分析した.スリランカの有機農業は,アグリビジネスが先進工業国に有機農産物を輸出することによって実質的な展開をみている.そこには,プランテーション栽培企業と,小農グループを組織する企業という二つのタイプが見出された.他方, NGOも有機農業の推進を行っているが,この場合は輸出よりも農村開発や環境保全に力点を置く.活動の活発なNGOは国際機関などとも密接な関係を持っている.このように,スリランカにおける有機農業の展開は,先進工業国との強い関係性を持ちながら進んでいるが,そこには一方的な従属ではなく,内発性や関係アクター間の連携が一定程度存在することが確認された.
著者
武者 忠彦
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.1-25, 2006-01-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
46
被引用文献数
3 1

本研究では,松本市中央西土地区画整理事業を事例に,地方都市における中心市街地再開発のメカニズムを制度的環境,都市政治,商店経営者の戦略という三つの視点から分析した.松本市では当初,行政と商店街組織の連携により再開発計画が推進されたが,補助金の削減という財政的要因に加え,個々の商店経営者らの現状維持的な戦略によって再開発は1980年代を通じて停滞した.しかし,大店法緩和を契機に,市長の開発主義的思想に基づく中心市街地への積極投資や行政の大型店対策が都市成長という名目で正当化され,再開発推進体制は再強化された.一方で,商店経営者の戦略は推進体制と必ずしも連動せず,固定資産税の増加などによる商店街からの撤退,テナント賃貸業への転換による商店街への残留,テナントの供給増に対応した新たな経営者の進出など,戦略は多様化した.こうした多様化は,区画整理事業の展開や事業後の商店経営環境の維持にプラスに作用する一方,開発目的を商店街振興から都市成長へとシフトさせ,行政主導の再開発を加速させるという結果をもたらした.
著者
須山 聡
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.13, pp.957-978, 2003-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
52
被引用文献数
1 1

本稿は富山県井波町の瑞泉寺門前町の景観を分析し,井波彫刻業が景観形成に果たしな役割を明らかにする.彫刻業者は,1970年代半ば以降門前町に進出し,近世末から近代にかけての商家建築を借り,作業風景や作品が外部から見える工房を意図的に作った.伝統的な彫刻と伝統的な建築物との組合せを,歴史的背景を知らない観光客は,「伝統」的景観と理解するが,両者は歴史的に関連を持たない.ゴッフマンの劇場理論を用いた分析から,門前町には観光と工業の二つの舞台が併存することが明らかになった.前者は「伝統」を,後者は生産をテーマとし,いずれにおいても彫刻業者が主役を演ずる.「伝統」テーマを期待した観光客は,彫刻業者が生産をテーマとしていることを理解しようとせず,彫刻業をアトラクションとして楽しむ.行政・地域社会は,彫刻業を利用した街路の修景などで,舞台を「伝統」テーマに沿って演出した.彫刻業者は工業の舞台にあり続けながら,行政・地域社会が演出した観光地の景観を経営資源として利用している.門前町の景観は,異なる景観形成主体によって演出された舞台の二重構造によって形成された.
著者
清水 克志
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.1-24, 2008-01-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
54
被引用文献数
1 1

本稿はキャベツ (甘藍) を事例に, 日本における外来野菜の生産地域が明治後期から昭和戦前期にかけて成立する過程を, 食習慣の定着と関わらせて考察することを目的とした. 明治前期に導入されたキャベツは, すぐには普及しなかった. 明治中・後期に, 都市の知識人がキャベツの新たな調理法を考案し, 大正期以降, その調理法が婦人雑誌や新聞で紹介された. また軍隊や学校給食などでキャベツがいち早く利用され, 都市住民の間でキャベツ食習慣の定着がみられた. 一方, 岩手県盛岡市などの各地の民間育種家は, 個々の地域の自然条件に適した作型であることに加え, 都市住民の嗜好に合致する国産品種を育成し, 生産地域の成立を促した. その結果, 長距離輸送が可能なキャベツは, 収穫期の異なる複数の生産地域から, 都市へ周年的に供給されるようになった. このことは, 外来野菜の生産地域の成立が, 食習慣の定着と密接に結びついて展開したことを示している.
著者
伊賀 聖屋
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.361-381, 2007-05-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
31
被引用文献数
7 5

本稿は, 地場の味噌製造業者A・B社が使用する良質な原料農産物に着目し, その質の構築過程を「概念化」・「物質化」・「維持」の観点から考察した. 結果, 以下の点が明らかとなった. (1) A・B社原料の質は, 主に各社が食の安全に敏感な人々との交渉の中で, 原料の具体的生産・調達条件を規定することにより概念化された. (2) 概念化された質の物質化に向け, 各社はそれへの同意を得やすい農家に対し積極的アプローチを行った. その際に形成された各社ネットワークは, 原料の規定条件により異なる空間的発展様式を見せた. (3) 各社原料の質は, 各社が原料生産者に対し質の妥当性を再検討する場や原料生産の技術的支援体制を整備する一方, 消費者に対し原料生産に関わる情報を的確に伝達することで維持される. (4) 上の過程において各社は, 地元外の原料生産者や消費者とも戦略的に結びつきを強めたが, 接触手段・頻度の向上を図ることでその地理的関係を調整していた.
著者
斎藤 久美
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.710-723, 2005-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
26

本研究は,韓国の地方中心都市である清州市を対象とし,都市における血縁組織の形成とその変容を,村落から都市への人口移動との関連から明らかにすることを目的とした.韓国の都市における血縁組織の形成は,1960年代以降,首都ソウルに人口が集中するとともに同族集落からの転入者によって,ソウルなどの大都市に形成される動きがみられるようになった.清州市の血縁組織は,清州市への人口集中が著しくなった1970年代以降活発に形成されたという.一方,清州市の血縁組織は,1970年代に忠清北道内の同族集落から清州市に転入した経済的・社会的成功者たちを中心に,同族集落との連絡を補うために形成された.その後,都市の血縁組織は,各同族集落からの転入者を会員に迎え入れ成長したが,その中で,就職の斡旋や住居地の紹介など,転入者の都市定着支援などの役割も補う例もあった.都市の血縁組織は都市居住者が増大するにしたがって,都市住民のニーズに応じ,血縁組織が細分化されるなど,社会状況に応じて変容し続けている.
著者
高野 誠二
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.661-687, 2005-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
54
被引用文献数
3 2

本稿では,日本の都市中心部における特徴である,古くからの街道沿いに発達した旧中心商店街と,鉄道開業後に発達した駅周辺地区との商業の競合関係に着目しつつ,各種の都市整備事業を通じた旧中心商店街の活性化をめぐる,都市内の政治権力構造を考察した.八王子市において大きな政治力を発揮してきたのは,歴史の古い旧中心商店街である甲州街道沿いの地区を地盤とする,「旦那衆」と呼ばれる実力者達である.彼らは商工会議所や商店会連合会等の中枢を占めたり,政治家や市の幹部等との豊富な人脈を駆使したりして,旧中心商店街の開発が優先的に行われるように積極的に活動した.また,自地区以外での事業には消極的な態度をとり,旧中心商店街の活性化を重視する政策の形成に大きく寄与してきた,しかし,大型店が駅周辺地区や郊外を志向するようになる中で,旧中心商店街の商業は衰退を続け,そこでの都市開発事業の多くは採算の目途が立たずに実現できなかった.また,旧中心商店街以外の地区や,旦那衆以外の商業者の反対意見により,八王子市における旧中心商店街優先政策は再検討を迫られつつある.
著者
大平 晃久
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.121-138, 2002-03-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
91
被引用文献数
3 2

場所の社会的構築において言語は中心的な役割を担い,地名もその一部として位置付けられる.しかし,固有名論を適用した地名の検討は個人名に比べ従来ほとんど行われていない.本研究では地名の名付け・使用の検討から,地名は場所を直接指示するという常識的な理解は誤りであり,地名も一般名同様にカテゴリーとして機能していることを示す.すなわち,個体化と類似性の設定に基づくカテゴリー化の能力によって,複数の範域が同一視され,また,無数の時間的・空間的切片の差異が捨象され,地名・場所は成立している.その上に,階層構造としての下位の地名の上位地名によるカテゴリー化,範域内の全事物・事件の地名によるカテゴリー化が加わることで,現実の豊かな地理的知識が構成されているのである.このように能動的・動態的なカテゴリー化として地名を理解することは,認知言語学や認知地図研究との接合によって,大きな発展の可能性を持っていると考えられる.
著者
佐藤 英人
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.80, no.14, pp.907-925, 2007-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
57
被引用文献数
1 3

本研究の目的は, 大規模オフィス開発事業に伴うオフィス移転を, 従来, 住居移動で議論されてきたフィルタリングプロセスを適用して分析し, 新たに供給されるオフィスビルが, 既存市街地内のオフィスビルに対して, 不動産経営上, どのような影響を与えるのかを解明することである. 分析の結果, 横浜みなとみらい21地区には, 横浜市内から転出した企業が多く, 新旧オフィスビル間にはテナント企業の争奪が認められた. 争奪によって空室となった既存市街地内のオフィスビルでは用途転用が確認され, 公共施設や商業施設への転用が認められた. また, 引き続き事務所として利用されたオフィスビルは, 横浜市内への進出を目指す中・小規模企業の受け皿となっている. したがって, 大規模オフィス開発事業に伴うオフィス移転は, テナント企業の連鎖移動を誘発させ, 結果的には, 既存市街地のオフィスビルに入居するテナント企業の選別格下げが起る.
著者
成宮 博之 中山 大地 松山 洋
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.14, pp.857-868, 2006-12-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
47
被引用文献数
3 3 1

本研究では,東京都内にある30地点の湧水における過去20年間の水温の変化について調べた。また2005~2006年の渇水期と豊水期に現地で水温,pH,電気伝導度を測定し,実験室でSiO2濃度を測定したSiO2濃度は,湧水の背後にある洒養域の広さの推定に用いた.これらと,東京都が過去に実施した調査結果とを合わせることで,1987~2006年の湧水温に関する観測値が得られた.水温の観測値を地点,時期ごとに分類し,外れ値の影響を考慮して変化傾向を求めることができるKendall検定を適用したところ,解析対象とした23地点のうち,渇水期13地点,豊水期11地点において,有意水準5%で有意な水温の上昇傾向がみられた.湧水のSiO2濃度と,渇水期と豊水期の水温差との問には有意水準5%で有意な負の相関関係がみられた。このことから,湧水のSiO2濃度が高い場合,その湧水は相対的に滞留時間が長く,また比較的広い洒養域からなるものと考えられる.そして熱容量が大きいことから気温や環境の変化に対して水温の変化が顕著に表れない可能性が示唆される.
著者
戸所 泰子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.481-494, 2006-08-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
21
被引用文献数
3 1

本稿は,都市における空間利用と,人々が都市景観を認識する際に重要な視覚情報となる建築物の外観に使用される色彩に着目し,その両者の関係性について,京都市都心部を事例に分析したものである.その結果,幹線道路には,大規模・中高層建築物に収容される商業・業務関連機能が,細街路には,京都の伝統的建築物である京町家を中心に居住関連機能が各街路に沿って卓越すること,都市景観の識別に大きく影響する色彩には「地域の色」と「企業の色」があることなどがわかった.幹線道路沿道には,地域性よりも全国一律の企業アイデンティティを重視した「企業の色」が,細街路沿道には,その地域の自然・文化を反映し,地理的・歴史的に形成されてきた「地域の色」が現れる.「地域の色」は主として建築物の外観に用いられ,都心景観全体のベースを成すが,近代化に伴う機能的地域分化・都市更新の過程で「企業の色」が「地域の色」を凌駕し,地域性を喪失させている.
著者
伊藤 慎悟
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.97-110, 2006-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
3 2

本研究では,横浜市において1960年代後半に開発された住宅団地を対象とし,人口高齢化に差異が生じるかを検証した.その結果として,1975年という開発間もない時期に,すでに年齢構成に差異がみられた.そこで本研究は,住宅形態ごとに四つに類型化し,高齢化の進展状況を比較した.1975年は持家率の高さが居住者の年齢や,その偏りに影響を及ぼすことが判明した.しかし,1985年になると持家率にかかわらず公団・公社の共同住宅において居住者がかなり入れ替わり,居住者年齢の偏りは大幅に緩和された.一方,公営の借家住宅ではこの偏りがあまり緩和されず,中高年層の転入もあって急激に高齢化が進展した.戸建て住宅も同様に高齢化の進展が著しく,公営の借家住宅と戸建て住宅の中には,2000年時点で,高齢人口比率が30%を超えた地区も出ている.
著者
成瀬 厚
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.172-175, 2003-03-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1
著者
久保 倫子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.45-59, 2008-02-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
32
被引用文献数
4 3

本研究は, 水戸市中心部に立地するマンションに居住している世帯の現住地選択に関する意思決定過程の分析を行った. 水戸市中心部におけるマンション居住者の多くは, 周辺地域からの住み替え世帯であり, 核家族世帯や中高年夫婦世帯が多い傾向がある. マンションの選択は, 水戸市中心部への選好と密接に結びついている. つまり, マンション自体への評価と水戸市中心部への志向によって中心部のマンション需要が生まれている. マンションが評価されているのは, 将来的な賃貸や売買のしやすさ, 戸建住宅や賃貸住宅と比較しての購入しやすさ, セキュリティや維持管理の容易さ, そして立地的優位性である. マンション購入世帯の意思決定過程の特徴は, 居住形態の決定の段階によって意思決定のパターンや転居先の選択要因, 転居先の探索地域に差異がみられることである. また, 居住形態の選択要因は, 世帯の経済状況や世帯構成, 親族との関係などを反映している.
著者
青山 高義
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.405-422, 2006-07-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
25

松本盆地南部や伊那盆地北部に発達する南風は,総観スケールの気圧傾度が北東方向に低い場合と,北西方向に低い場合に発達する.前者をNE型,後者をNW型として,二つのタイプの気流に対する地形の影響をスコラー数(l)を用い検討した.NE型は冬季に多く,冬型や二つ玉低気圧で発現し, NW型は暖候期に多く,前線型,日本海低気圧型,移動性高気圧型などで発現する.両タイプの850hPaの風向は250°, lは0.81km-1を境界とし, NE型では風向は北よりでlはより小さく, NW型では南よりでlはより大きな値となって,NE型では山越え気流, NW型では迂回流の性質が強くなると考えられる.それぞれのタイプの850hPaの風と地上の風速,局地的気圧傾度,温位差などとの相関分析を行った. NE型では,局地的気圧傾度や温位差等と高い相関を持って山越え気流の特徴を,NW型では,局地的気圧傾度等と相関を持つが温位差との相関は低く迂回流の特徴を示した.
著者
藤田 和史
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.1-19, 2007-01-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
24
被引用文献数
4 1 4

近年, 日本の製造業は, 技術集約・知識集約型の生産システムへと変化しており, この傾向は大都市圏外に立地する中小製造業へも波及しつつある. 本稿は, 長野県諏訪地域を事例に, 変化の先進事例である試作開発型中小企業について,「知識・学習」に着目しながら, その生産および技術的存立基盤を明らかにすることを目的とした. その結果, 知識・情報の収集と習得・創造によって構成される技術学習が, 試作開発型中小企業に対して, 技術的な陶冶をもたらすと同時に, 成長の基盤を与えたことが明らかとなった. また, 技術学習に関する知識は, 機械加工に関わる暗黙知が中心であり, それらめ知識は諏訪地域内の同業者からもたらされる. これらの暗黙知が, 域内に立地する関係主体間に共有されることで, 知識を基盤とした生産体系が構築されている.
著者
柚洞 一央
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.79, no.13, pp.809-832, 2006-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
33
被引用文献数
2 1 3

家畜であるミッバチの生態を利用した養蜂業は,植生や気候などの自然環境の変化に大きく左右される産業である.花を求めて全国を移動するという日本の養蜂業の形態は,明治期において確立されたが,戦後の蜜源環:境の劣化に伴い,近年ではその経営形態も大きく変化してきた.本稿は,日本の養蜂業が,今日どのような経営を行っているのか,各種の統計資料と全国131の養蜂業者に対する聞取り調査をもとに,その地域的特色と近年の変化を明らかにし,それらの変化が持っ意味にっいて考察する.今日の養蜂業者は,経営者の高齢化や中部地方以西における著しい蜜源植物の減少に伴って,廃業や移動空間の「狭域化」を余儀なくされている.その一方で,ハチミツ生産のみでなく,ローヤルゼリー生産や,花粉交配用にミツバチを貸し出すポリネーションなどの新しい生産形態を取り入れて,経営の多様化・安定化を模索してきた.こうした点にっいて,養蜂業の持っ特質,つまり「移動性」と「間接性」という観点から,近年の養蜂業の経営動向にっいて考察を行った.その結果,蜜源分布の変化に合わせた移動空間の変更や,ミッバチを媒体とした資源利用の方法という点では,柔軟な対応を行ってきたと評価できる一方,蜜源環境の維持や,業界内部における資源配分という点においては,さまざまな問題を残しているという現状が明らかになった.