著者
戸田 春華
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.614-634, 2007-10-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
31
被引用文献数
5 6

本研究は, 近年深刻化しつつある猿害について, 被害地周辺でのサルの行動特性と被害地との関係を明らかにするものである. 対象地域は三重県の北西部, 鈴鹿山脈南部に位置する亀山丘陵である. 田畑作物の収穫時期にあたる8月の1ヵ月間, ラジオテレメトリ法を用いてサルの群れを追跡し, サルの行動ルートと猿害の場所・内容を調査した. さらに群れの行動ルート周辺において聞取り調査を行い, 猿害について情報を得た. 対象としたサルの群れは, 耕作地が連続的に分布する森林を移動し, その林縁にある耕作地の作物を食べていたことが明らかとなった. 大きな傾向として林縁からの距離が長ければ長いほど被害は少なくなった. また, 林縁に近い場合でも, 特にカキやクリの木がある場所には, サルの群れが何度も訪れ, その周辺の田畑への被害が著しかった. その一方で, そのような条件でも, 防護柵を設置し, ロケット花火で追い払っている耕作地周辺では被害が少なかった. 本稿で明らかにしたサルの行動と被害地の特徴は今後の猿害対策にも大きな効力を発するものと思われる.