著者
久米 功一 鶴 光太郎 戸田 淳仁
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.25-38, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
11

本稿では、正社員の多様な働き方が進展している現状に鑑みて、限定的な働き方が労働者に与える厚生について検討した。とくに、制度上の区分ではなく、働き方の実態に着目して分析した。限定的な働き方をしている正社員のスキル形成と満足度の視点から、これらの関係を構造的・立体的に捉えることを試みた。具体的には、限定的な働き方とスキルが仕事・生活満足度に与える影響について金銭的価値から評価した。 その結果、満足度の観点からみると、残業があることやスキルアップの機会がないことが、仕事満足度も生活満足度も損ねていた。生活満足度アプローチから、満足度を損ねる働き方の所得補償額を試算すると、正社員のスキル向上機会がないことで失われる仕事満足度、生活満足度の経済的価値はそれぞれ1,233.3円/時(平均時給の72.4%)、808円/時(同47.4%)と、残業に対する補償額の2~3倍と大きかった。女性正社員は、男性正社員に比べて、残業や転勤・配置転換、ラインに組み込まれていることが、生活満足度を損ねて、その大きさは、時給の約6割程度に相当していた
著者
久米 功一 鶴 光太郎 戸田 淳仁
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究
巻号頁・発行日
vol.45, pp.25-38, 2017

本稿では、正社員の多様な働き方が進展している現状に鑑みて、限定的な働き方が労働者に与える厚生について検討した。とくに、制度上の区分ではなく、働き方の実態に着目して分析した。限定的な働き方をしている正社員のスキル形成と満足度の視点から、これらの関係を構造的・立体的に捉えることを試みた。具体的には、限定的な働き方とスキルが仕事・生活満足度に与える影響について金銭的価値から評価した。その結果、満足度の観点からみると、残業があることやスキルアップの機会がないことが、仕事満足度も生活満足度も損ねていた。生活満足度アプローチから、満足度を損ねる働き方の所得補償額を試算すると、正社員のスキル向上機会がないことで失われる仕事満足度、生活満足度の経済的価値はそれぞれ1,233.3円/時(平均時給の72.4%)、808円/時(同47.4%)と、残業に対する補償額の2~3倍と大きかった。女性正社員は、男性正社員に比べて、残業や転勤・配置転換、ラインに組み込まれていることが、生活満足度を損ねて、その大きさは、時給の約6割程度に相当していた