著者
坪田 将吾 山本 聡史 手島 司 林 茂彦
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.152-161, 2015-09-01 (Released:2015-09-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

イチゴの循環式移動栽培における果実計数を目指し,栽培ベッドの横移送中に取得した画像を基に,赤色果実および未熟果実の計数を行うベッド移動型果実撮影装置を試作した.また,計数処理を行うアルゴリズムとしてRGB + TOF処理を開発し,RGB処理による果実計数との比較を行った結果,以下の知見が得られた.1)RGBカメラおよびTOFセンサの光軸を栽培ベッドの移動方向と平行に配置し,ラインスキャンによって画像を取得したことで光軸がほぼ重なり,カメラごとの内部パラメータの違いを補正することなく,RGB画像と距離画像をアフィン変換のみにより高精度に対応付けすることができた.2)模型果実を用いた果実の重なり分離試験において,果頂部の高さの差が20 mm以上のとき,果実の重なりが大きく粒子解析手法では果実の分離が困難な果実の中心軸間距離が30 mm以上の場合でも,距離情報を用いることにより分離可能であった.3)赤色果実を計数する性能を検証した結果,「あまおとめ」に対するRGB + TOF処理で96.8 %,RGB処理で90.3 %であった.「紅ほっぺ」でも,RGB + TOF処理で94.7 %,RGB処理で74.3 %となり,距離情報により重なった果実を分離することで,高精度な果実の計数が可能となった.しかし,距離情報による果実分離では,TOFセンサからの距離が近い果頂部周辺を一つの果実として認識し,1つの果実を分割してしまうことがあり,誤検出数が増加した.4)未熟果実を計数する性能を検証した結果,「あまおとめ」に対する計数成功率は,RGB + TOF処理で69.6 %,RGB処理で70.9 %であった.また,「紅ほっぺ」でも,RGB + TOF処理で71.2 %,RGB処理で72.6 %となり,距離情報を組み合わせることによる精度向上は見られなかった.しかし,高い位置に着花する花等を距離情報を用いて除去することができ,誤検出数が削減できることが明らかになった.
著者
林 茂彦 山本 聡史 手島 司
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

イチゴの循環式移動栽培における効率的な栽培管理を目指し、非破壊非接触で群落の3次元情報、果実情報(数、大きさ)を推定し、栽培ベッド毎に個別管理可能な計測システムを開発した。各情報は、カラー画像と距離画像を組み合わせた画像処理アルゴリズムによって抽出を行った。イチゴ群落の3D再構築により任意の断面で草高や幅を推定でき、2.5ヶ月間経時的に計測した結果、推定値から経時変化の観察が可能であった。果実の情報に関しては、赤色果実同士の重なりを距離情報によって分離することで着果密度によらず約95%の精度で計数できた。さらに、果実の大きさを推定した結果、推定精度はRMSEP12%であった。