著者
吉利 宗久 手島 由紀子 母里 誠一
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.237-242, 2000

本研究は, アメリカ合衆国の学校教育における医療的サービスの提供をめぐる7つの判例を取り上げ, その特徴と問題点を把握することを目的とした.個別障害者教育法(IDEA)は, 障害児のユニークなニーズに対する「特殊教育及び関連サービスを強調する無償で適切な公教育」を保障している.また, 「関連サービス」は, 診断と評価を目的とする「医療的サービス」及び, 有資格スクールナースやその他の有資格職員によって提供される「学校保健サービス」を含む.しかし, これらの法定義が不明確であるために, 学校における医療的ケアの提供をめぐる問題が生じ, 法廷で争われている.1984年のTatro訴訟に端を発するこの問題は, その後の訴訟においても引き続き議論されてきた.その後の判例において検討されたことは, IDEAの医療的サービスから除外されるべき範囲, 施行規則の「学校保健サービス」及びTatro訴訟の連邦最高裁判所判決に関する解釈であった.1999年に連邦最高裁判所は, Garret訴訟において, 障害児が必要とするサービスが医師によって提供されない限り, サービスの性質や範囲に拘わらず, 学校において提供されるべきことを認めた.Garret訴訟は, 15年間にわたる学校での医療的ケアの提供をめぐる訴訟を集約する結果をもたらした.今後, 判例の一層の検討により, 障害児の医療的ケアに関する教育的課題が解明されるべきである.